霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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-第一部-
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12月31日

    今日は大晦日。一年で最後の日。そして、明日は新しい一年の始まり。
    思えば、今年はいろいろなことがあった。
    シンジと出会ったし、この家で新しい家族が出来たし、本当に幸せだった。
    ……戦自は首になっちゃったけどね。
    でも、やっぱり今年はいい一年だったと思う。
    そんなことを考えながら、みんなで家の中を大掃除して、その後、コタツに入って
    私たち女の子3人? はおしゃべりをしていた。
    ちなみに、今の日本に冬はないけど、お正月の気分を出すためにコタツを使うと
    ミサトさん(まだちょっとこの呼び方は照れるなぁ)は言っていた。
    シンジがスーパーで年越しのお買い物へ行っていて、今は私たちだけ。
    拳くらいの大きさの温州ミカンを食べながらアスカが言葉を出した。

  「シンジって、自分の部屋が無いのをよく我慢してるわねぇ」

    そう、私は以前シンジが使っていた部屋を自室にしている。
    他に空き部屋がないシンジはリビングに布団を敷いて、毎夜、眠っていた。

  「私の部屋はシンジと一緒でいいのに」

    と、私はボソッと言った。
    すると、アスカがギロッと私に睨みをきかせて、

  「アンタ、バカぁ? 男女5歳にして同衾せずというでしょ。そんなの絶対に駄目」
  「う〜、」
  「だけど、ホント、シンちゃんはアレをどうしているのかなぁ?」

    と、ミサトさんはミカンを口の中いっぱいに頬張りながら言った。

  「アレって、何ですか?」

    と私が訊くと、ミサトさんはニヤッといやらしい笑いを浮かべて、

  「そりゃあ、アレと言えばアレよ」

  「ミ、ミサト。何バカなこと言ってんのよ」
  「でも、アスカ。疑問に思わない? いったい、いつどこでしているのか。
   中学生なんて、そりゃあ、ヤりたい盛りのはずよ」
  「ミサト、不潔」
  「なあに言ってんのよ。アスカだって、もう少しすれば経験するのよ。
   もしかすると、大好きになっちゃうかもよ」
  「アタシは! そんな汚らしい大人になんかならないわよ!」

    と、アスカは大声を出した。
    私は恥ずかしさで何も話せずに、ただ黙って二人のやり取りを聞くだけだった。

  「まあ、まあ、アスカ。そんな興奮しないで。話を元に戻すけど、シンちゃんは
   毎日、悶々としているはずよ。なんたって、この家には二人の美少女と、この
   ナイスバディで絶世の美女である私が住んでいるんですもの」

    と私たちへ見せつけるように、ミサトさんは大きな胸を反らした。
    私とアスカはそれを唖然としながら見ていたけど、

  「でも、シンジはそんなにエッチじゃないと思います」

    と、私は小さく反論した。

  「そうかなぁ。シンジ君って、けっこうエッチだと思うなぁ。それに、」

    とミサトさんは言いかけて、私をいやらしい目で見つめた。

  「最近、マナちゃんは露出が激しいから」
  「……!」
  「前なんて、お風呂から上がった時は、ちゃんと服を着ていたのに、今じゃ、
   バスタオルを巻いただけで出てくるんだもんねぇ。下着姿の時もたまにあるし」

    その言葉に私は頬をトマトのように赤くさせた。
    確かに、ここへ来たばかりの私はもう緊張の連続だった。
    大好きなシンジに恥ずかしいところを見られたくなくて、いっつも気を遣っていた。
    お風呂から出る時は浴室をチェックしていたし、トイレの時も入念に。
    それが今では……
    このままなら、シンジの前でオナラもするようになるかも。
    私はもう恥ずかしくて俯いてしまった。

  「まあ、マナちゃんだけでなく私もアスカもけっこう家の中じゃ無防備だから、
   シンちゃんも目のやり場に困ることが多いと思うの。だから、おかずには不自由
   しないどころか、栄養過多で外に出さないと体が持たないんじゃないのかなあ」

    この場はミサトさんの独演会場と化して、私とアスカは黙っているしかなかった。

  「きっと、シンちゃんも不自由しているはずよ。こうなったら、もう、お姉さんが
   協力してあげるしかないかな。えへへ」
  「だ、ダメよ! ミサト!」

    と、アスカが大声を出した。

  「んー、何が駄目なのかなあ? アスカ」
  「だから、この家でそうゆう淫らなことは、と、とにかくダメなのよ」
  「じゃあ、アスカがやってみる? 別に、私は辞退してもいいのよん」
  「えっ、あ、アタシはまだ、その、心の準備というか、……ダメっ!」

    と言うと、アスカは真っ赤な顔を俯かせた。
    私はずっと黙っていたけど、やっぱりシンジの恋人ならそういうこともちゃんと
    しなきゃならないと思い、

  「あ、あのー、私がします」
  「えっ、マナちゃんが立候補するの? じゃあ、マナちゃんにお願いしようかしら」
  「ダメよ。ダメダメ、ぜーったいにダメよ!」
  「私はかまいません」
  「ダメって言ってるでしょ。そんなことアタシが許さないわよ」
  「どうしてダメなんですか? 私はかまわないと言っているんですけど」
  「アンタがよくても、アタシがダメと言っているのよ」
  「だから、どうして?」
  「どうしてもよっ!!」

    アスカと口論になり、私は周りがすっかり見えなくなっていた。

  「アスカはいったいシンジのなんなの? いい加減、はっきりさせてください」
  「あら、それは私も知りたいわ」
  「え、あっ、」

    アスカは一瞬にして動揺へ顔色を変えた。

  「その、アタシは、……、えっと、だから……」
  「だから、何なんですか?」
  「みんな、年越しそばを買ってきたよー」

    その声に私たち3人は瞬時に振り返った。
    シンジがスーパーの買い物袋を両手に持って立っている。
    私は爆発しそうなくらいに頬を赤く染めた。
    アスカも恥ずかしいのかさっと立ち上がると、自室へ駆け込んで行った。
    そして、ミサトさんはお腹を抱えて大爆笑を始めていた。
    そんな中、シンジはわけがわからないのかキョトンと首を傾げていた。
    しばらくして、私は小さな声で、

  「ねえ、シンジ」
  「ん、なに?」
  「あ、あのね。シンジは自分の部屋がほしくないの? 私、シンジの部屋をもらっ
   ちゃったじゃない。だから、……」
  「あー、それなら気にしなくてもいいよ。僕、けっこう、このリビングで寝ることが
   気に入っているから」
  「そうなの?」
  「うん。なんか、ここで寝ていると、楽しいんだ。たぶん、ここに来る前は、ずっと
   離れの部屋に一人でいたからかも。でも、今はみんなと一緒だから」

    そう言うと、シンジは照れるように俯いた。
    いつの間にか、ミサトさんはシンジの横に立って、

  「シンちゃんはウチの子だもんねー」

    と言って、シンジの頭を軽く撫でていた。
    そんな二人の様子に私はなんだか心が温かくなって、この家に来て本当によかったと
    胸の中で呟いていた。
    とてもいろんなことがあった今年もあと少し。
    来年もみんなと仲良く暮らしていきたいと、そう私は思った。
    そして、来年こそはシンジとちゃんと恋人同士になれますように。
    って、きゃー、まだ、中学生の私たちには早いかも。
    でも、シンジが望むなら。……あー、やっぱり、ダメーかも。
    ……だけど、いつかきっと