-第三部-
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あれから一ヶ月。 私はすっかり回復した。これが若さというものかしら♪ ひとまずミサトさんのマンションに戻ってきたんだけど、迷ってるのがこれからの身の処し方。 いつまでもミサトさんの厄介になるのも気が引けるし、かといって 親無しの身で戦自の職も失った今、一人で生きていくことができるかどうか。 そうやって考えを巡らしていたところ、 「ね、マナちゃん」 ミサトさんが声をかけてくれた。 「これからのことなんだけど。ずっとウチに居てもらってもいいのよ」 「そう言っていただけるとすごくうれしいんですけど、これ以上ご迷惑おかけするわけには……」 「やぁーねー、迷惑なわけないじゃない」 「でも、金銭的なこととか」 「だいじょーぶ。ネルフから退職金たっぷりもらったから」 私も、本音はこれからもここでシンジやアスカたちと暮らしていきたい。 でも、ミサトさんもいずれお嫁に行かなくちゃいけないだろうし、 私たちみたいなコブ付きで本当に大丈夫なんだろうか。ちょっと心配。 同時に、彼女もやはり孤独を恐れているのではないか、とも感じた。 「もう少し考えてみます……」 とりあえず、そう答えておいた。
「ねぇ、アスカはどうするの?」 シンジが尋ねる。 「あたし? あたしはもうしばらくミサトのところにご厄介になるわよ」 「へぇ、ちょっと意外だな。アスカのことだからすぐドイツに帰っちゃうのかと思ったよ。 もしかして、日本のことが結構気に入ったの?」 「まーね。日本のゲームって割と面白いのよ。洋ゲーにはない味があるわ」 「洋ゲーって、アスカ、ドイツ人でしょ。すっかり日本のゲーマーだね」 ゲームがどうのと言ってるけど、本当はシンジと別れたくないのに違いないわ。 アスカは好きだけど、ちょっとライバル心が頭をもたげる。 「あたしが居なくなったら、ペンペンが寂しがるし」 「それに……、お義母さんとしっくりいかなくて、ね」 その言葉でちょっと場の雰囲気が湿っぽくなる。 「ま、そんなことはどうでもいいっか。ね、ミサト、いいでしょ? お金ならあっちから送ってもらうわ」 「もちろん、OKよ。で、シンジ君は?」 「ぼくは………」 「父さんが、一緒に暮らさないかって言ってるんです」 「えっ?」
あの髭を生やしたこわーい顔のお父さんがそんなこと言ったとは。 でも、考えてみると肉親と暮らすのが一番いいのかもしれない。 私にはもういない、血を分けた家族……。 「どうしようか、迷ってるんだ。あの父さんとうまくやっていけるかどうか……」 「迷うことないじゃない。お父さんと暮らしなさいよ」 私は心とは裏腹にそう言った。本当はこれからもシンジと暮らしたいんだけど。 「マナの言うとおりよ。ってか、この家はあたしとマナでいっぱいいっぱいよ。 さっさと出て行って欲しいもんだわ」 アスカも、とても素直じゃない言い方で促す。 「そうだよね。うん、決めた。ぼく、父さんと暮らすよ」