-第四部-
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週末を利用して温泉に行くことになった。と言っても手近な箱根湯本温泉。 一緒に行くのは、ミサトさんとリツコさん、アスカと綾波さんと私、 シンジとお父さん、そして、誰だか知らないお爺さん、それから、ペンペン。 旧ネルフ御一行様って感じ。 二台の車に分乗して旅館に到着。 みんな浴衣に着替えるとさっそくお風呂に向かう。 「しっかし、夕食もまだなのにもうお風呂入るわけ?」 アスカが不思議そうに言う。 「うむ、宿に着いたらまず一風呂。そして宴会が済んだら一風呂。 寝る前にまた一風呂。朝起きたら一風呂。それが日本の温泉だ」 白髪のお爺さんが横から答える。 「へーぇ、ずいぶん風呂好きなんですね、日本人は」 苦笑するアスカ。 いや、いくらなんでもそこまでお風呂好きなのはお年寄りだけだよ……。
大きな岩に囲まれた湯船は、まん中で男湯と女湯に仕切られている。 「あれ? ペンペンは?」 「アイツはオスだから男湯よ」 「へー、そうなんだ」 「ってか、ペンギンって温泉に入れて大丈夫?」 「なにしろ、新種の温泉ペンギンだからねー。温泉大好きなのよ」 「クェー、クク、クヮーッ」 噂をすれば影、男湯の方からペンペンの嬉しそうな声が聞こえる。 「温泉、水滑ラカニシテ、凝脂ヲ洗フ。分かるか、碇。白楽天の……」 あのお爺さんも上機嫌みたい。 「レイもこっちの方に来なさい」 「いえ……」 綾波さんは湯船の隅っこの方に一人でつかっている。 「ほら、ミサト、見なさい、アスカとマナちゃんのお肌。 うらやましいわ、若さって……」 はは……、始まっちゃったよ、リツコさんの愚痴……。 「リツコさんのお肌も綺麗じゃないですか」 「そう? ありがと。お世辞でも嬉しいわ」 しばらくゆったりとお湯につかっていると、本当に身も心も洗われる気がする。 ところで、ここのお湯、銃創にも効くのかな? ときどき、古傷が痛むのよね。 って、私、年寄りくさいかしら。