霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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-外伝(1)-

初月秋日

  「あーあ、タイクツゥ〜」
    最近、アスカは暇をもてあましてるみたい。

  「そだ、ゲーセン行きましょ、ゲーセン」
  「でも、ゲーム機うちにあるじゃない。お金もったいないよ」
  「家庭用とアーケードじゃ全然モノが違うのよ。いいから、行きましょ。さぁ」

    と、いうわけで最寄りのゲームセンターへ。
    ………
    ……
    …

  「よぉ、アスカ、ひさしぶりじゃん。その娘は?」
    到着するやいなや、顔見知りらしい数人の男の子が早くもアスカを取り巻く。
    いわゆるゲーセンクイーンってやつね。さすが、アスカ。
  「友達よ。ゲーセン初めてだから色々教えてあげて」
  「へー、そうなんだ。君、名前は?」
  「マナ」
  「そっかぁ、マナちゃん、どんなゲームが好き?
   格ゲー? 音ゲー? コインとか?」
    アスカの取り巻きの大半が私の方に来る。
    なんなの……、このモテっぷりは。まぁ、悪い気はしないけど。

  「そ、それじゃ……これやってみようかな」
    とりあえず目についた台を指さす。
  「フライトシムか、シブいなぁ。さぁ、どうぞ、どうぞ」
    男の子たちの一人がわざわざコインを入れてくれる。
    えへへ、得しちゃった。
    ゲーム自体は超簡単。
    トライデントはもちろんのことジェット練習機と比べても、
    レスポンスはリニアだし震動はないしで楽勝って感じ。
    ただし、敵の数はやたらに多い。

    しばらくの間ゲームに興じ、気がつくと
    周囲はちょっとした人だかりになっている。
    中高生や大学生やフリーターやオジさんたちの注目を一身に浴びながら
    黙々と画面の中の敵機を撃破していく私。
  「うぉ〜、すげ〜」
    歓声が上がり、急に恥ずかしくなって手元が狂ってしまった。

    ――ゲーム・オーバー。

  「惜しかったねー、でも女の子で14面まで行ったの初めて見たよ」
  「本当に初めて? 実はゲーセン荒らしなんじゃないの?」
    男の子達がむやみにちやほやしてくれる。
  「えっと、私、連れが待ってるからもう行くね」
    急いで立ち去りながら、アスカの姿を探す。

    彼女は格闘ゲームのコーナーにいた。

  「やっぱ、ストレス解消はこれに限るわね」
  「でも、このコーナーちょっと怖くない?
   なんか、熱くなってケンカしてる人たちもいるし」
  「格ゲーのあとでリアルファイトに発展するのもまた一興よ」
    そっか〜、リアルファイトも強いからね〜
    って、アスカ、それ、女の子の台詞とは思えないよ……。

    その後、私もちょっと格闘ゲームしてみたり(やっぱりアスカにボコられた)、
    プリクラ撮ったりして家路についた。

    ――夕闇の迫る団地へと続く坂道。
  「いやぁ、マナがウザーい男共を引き受けてくれたから今日はゲームを堪能できたわ」
    やっぱり、私を連れて行った目的はそれだったのね。
  「もう。アスカの男よけの役ならもう一緒に行ってあげないよ」
  「そんなこと言わずに、また行きましょうよ、ねっ」
    そう言って、しなだれかかってくるアスカ。
  「そんなにくっつかないでよ、恥ずかしい」
    思わず赤くなってしまう私。
  「"Ich werde mich nicht langweilen, mit dich."
   (まったく、あなたといると退屈しないわ)」
    アスカが耳元で何か呟く。
  「バ、バウムクーヘン?!」
    とりあえず、知っているドイツ語で応答してみる。

  「ほら、ね」
    アスカは上機嫌で私にウィンクした。

written by Adrienne ◆HI8ebVe8lo

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