-外伝(1)-
学校からの帰り、商店街で福引きをやっていた。 「あれって、何をやってるの?」 アスカが不思議そうに尋ねる。 「あれはね、フクビキっていってね、あのガラポンを回して、 出てきた玉の色によって景品が決まるの」 「"Ach, das Rad des Vermögens..."(ふーん、『運命の輪』ね……) よし! あたしもやってみよっと」 「その前に、まず福引き券を手に入れなくちゃ」 「分かったわ。『フクビキケン』ね」 「おじさん、『フクビキケン』ちょうだい♥」 何をするかと思えば、いきなり福引き所のおじさんに券をねだり始めた。 「うーん、そう言われてもな〜。商店街で何か買って貰わないと」 「えぇ〜? でも、お金ないしぃ」 うひゃぁ、奥の手・かわいい子ぶりっこだね、アスカ。 「ねぇ、お・ね・が・い」 おじさんは美少女のお願い攻撃にタジタジになっている。 「弱ったなぁ。じゃ、一回だけ引いていいよ」 ついに陥落……。 「ありがとう! ようしっ」 アスカが、物凄い勢いで抽選機を回すと……。
「はいっ、………な、なんと! い、一等賞、大当たり〜」 おじさんは、顔面蒼白になりつつ当たりを告げる鐘を鳴らした。 「やったぁ♪」 「お、おめでとう。ちなみに景品の大型テレビだけど……」 「いらないわ。置き場がないし」 「本当かい? いや、助かるよ! 一等は一本しかないからね」 「それじゃ、一等は二本ということにしておきなさい」 「えっ、一等は辞退してくれるんじゃないの?」 「景品は辞退するけど、"一等になった名誉"を辞退する気はないわ。 ちゃんと、『一等 惣流・アスカ・ラングレー様』って張り紙しといてよ」 なるほど、「名を竹帛に垂る」とはこのことね。 なんでも一番にならないと気がすまないアスカらしいわ。 でも、アスカ。タダで一回引かせてもらっただけだってこと忘れないでね……。 私は、恥ずかしいので、アスカの腕を引っ張って早々にその場を立ち去った。