-外伝(2)-
春休みなので、やれショッピング、やれ食事と、 キリギリスのように連日街に繰り出して遊んでいる私たち……。 メンツは例によってアスカ、私、綾波さん、それにシンジ。 「ねぇシンジ、これ、カワイくない?」 「うん、いいね」 「シンジ〜、コレ、どうかな?」 「いいんじゃないかな。マナ」 「………碇君」 「ん、どうしたの? 綾波」 「これ………」 「あぁ、似合うと思うよ……」 こんな調子でおよそ2時間、デパートの婦人服売り場で楽しく過ごす。 ただ、シンジの顔には心なしか疲れが見えるけど……。 「おなか減ったな………」 私がそう呟いたのを皮切りに、一同(ただし綾波さん以外)、空腹を訴え始めた。 気がついたらもう午後二時。今から遠くへ行くのも億劫なので、 地下二階のレストラン街で食べることに。
ガラガラのエレベーターから降りて、どのお店に入るか迷っていると、 「あれってヒカリじゃない?」 アスカが、オムライスパーラー『星の玉子さま』の 窓際の席に座っているヒカリちゃんを発見した。 そして、トイメンの鈴原君の姿も………。 「邪魔しちゃ悪いよ。他の店に行こうよ」 「甘いわね、シンジ。幾多の困難を乗り越えてこそ真の愛なのよ。 アタシが、ヒカリとジャージの愛が本物かどうか確かめてやるわ」 さすが、アスカ。私も大賛成(>>464)! と、いうわけで、私たちはヒカリちゃんとジャージもとい鈴原君のテーブルに 勝手に相席させてもらうことにした。 いまだ消極的な態度のシンジの腕を引っ張って、お店に入る。 「オ、オウ……、ええところに来たのう。二人きりじゃ寂しいと思ってたところや」 私たちが寄ってくるのに気付いた鈴原君が、片頬を引きつらせながら言う。 「メシは大勢で食った方が旨いさかいな」 無理しちゃって。 お腹ペコペコなので、とりあえず注文する。 アスカはジャーマン・ミートローフ、綾波さんはサラダのみ。 私とシンジは無難にオムライス。………オムライスパーラーなので。 「あ、私たちは別に待ち合わせてたとかそんなんじゃなくて、 たまたま一緒になっただけなのよ……」 聞かれもしないのに言うヒカリちゃん。うーむ、分かりやすい。
「でも、ちょっと意外だな。二人は、アウトドアでデートしてるっぽいのにね」 いつぞやの仕返し(>>464)とばかりに思いっきり冷やかす。いひひ。 「そうそう。ヒカリがお弁当なんか作ったりしちゃってさ」 アスカも、意地悪モード全開……。 「だよね。お弁当持ってピクニックとか。いいな、いいな〜」 「あれは違うの。ウチっていつもお弁当の材料余っちゃうから……、 スズハラに食べてもらってるだけなの」 「せや、残飯処理を手伝ってるだけや」 「じゃ、なんで今日はしないのよ、その残飯処理」 アスカが詰め寄る。 「ムチャいいなや。なんぼワイでも毎日委員長の弁当じゃ飽きるで」 「………ごちそうさま」 黙々とフルーツサラダを食べていた綾波さんが、フォークを置き、 ペーパーナプキンを唇に当てながら言った。 「うわー、ファーストって案外キツいのね」 いや、アスカ、そういう意味の「ごちそうさま」じゃないと思うよ。 それにしても、鈴原君も隅に置けないなぁ。 ところで、みんな忘れてるけどシンジの友達はもう一人居た気がする。 うーん、誰だっけ?