-外伝(2)-
今日はミサトさんの運転で新熱海へドライブ。 シンジとアスカと私、それにリツコさんを乗せた青いアルビーヌが、 スピード違反気味に国道135号線を疾走する。 綾波さんも誘ったのだけど、「眠いのでパス」とのこと。 後部座席で私とアスカに挟まれたシンジは何となく居心地悪そう。 照れることないのにね♪ 「ねぇ、あたし思うんだけどさ」 アスカが白い顎に人差し指を当てながら話し始めた。 「ことわざで『根掘り葉掘り聞く』って言うじゃない」 「うん」 「根掘りは分かる。で、葉掘りって何?」 「………うーん、分かんないや」 「あ、葉っぱじゃなくて、『歯』で掘るんじゃないかな?」 「………いや、それはないよ、マナ」 そんなとりとめもない話をしていると、ミサトさんが急に振り返った。
「あれ? 千歳橋もう過ぎたかしら?」 「何言ってるの。いま通ったのは吉浜橋よ。しっかりして、ミサト」 「なーんか、最近、目の調子がねー」 ミサトさんは、そう言いながら目頭を押さえた。 「あーあ、ミサトもいよいよ『ロウガン』ってやつね」 アスカが茶々を入れる。 「んなわけないでしょ。失礼ね」 「分からないわよ。『箱根の馬は目から弱る』って言うもの」 と、リツコさんが追い討ちをかける。 「もー、あたしは馬じゃありませんっ! それにリツコ、このクルマ、今日から禁煙だから」 ミサトさんは、リツコさんがくわえかけた煙草をパシッと取り上げた。 「まあ、江戸の仇を長崎で討つとはこのことね」 突然車内禁煙を告げられ、不承顔のリツコさん。 シンジは相変わらず私たちの間で小さくなっているし、 アスカはなにか考え事みたい。 ………この隙にシンジの手を握りたいんだけど、ダメかな?
「ねぇ、なんで『箱根の馬』なの?」 暫く黙っていたアスカが急に口を開いた。 「え?」 「『鈴鹿の馬』とか『足柄峠の馬』じゃいけないの? それに、江戸の仇を長崎で討つって普通じゃない? 他人を討っちゃったんならともかく、仇なんだから場所は関係ないわよ」 ……なんて率直な……。さすが、外人さん……。 むむむ、どう答えればいいのやら。 「分かった!!」 「―――びっくりした……。何がわかったの、マナ?」 「それが『葉掘り』よ」 数秒間の沈黙の後、わずかに緑を含んだ深い青色の瞳がパッと輝いた。 「なるほどねっ!」 ………やっぱりカワイイわぁ、アスカって♥