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いつもの訓練の後、反省会の中に混ざった言葉だった。 「自爆ですか?」 「そう、自爆よ」 と答えたのは赤木博士だった。 「それで、アメリカ第1支部が消失したんですか?」 「エヴァ3号機に使徒が融合。でも、エヴァの素体と拒否反応を起こし、その結果、使徒は 自爆したというのがMAGIの推測よ」 「2000人の命を道連れにしてね」 と言った葛城さんの横顔には影が射していた。 「そんなことより、シンジ君。今日は頑張ったわね。シンクロ率トップよ」 「えっ、本当ですか?」 と聞いたシンジ君はうれしそうに笑みが浮かんでいた。 「ええ、そうよ。このところ順調に伸びていたから、いつかはと期待していた通りになったわね。 これからも頑張りなさい」 「はいっ、」 「シンジ君、すごーい」 と私が言うと、 「う、うん」 と、彼は照れたように頬を人差し指で掻いた。 そんな時、アスカさんがシンジ君をキッとした目で見ると、 「シンジっ、」 「……?」 「シンクロ率では負けたけど、エヴァの操縦では負けないからねっ。覚悟しなさい」 と言ってから、彼女はシンジ君の肩を軽く叩いて、 「ま、シンジにしてはよく頑張ったわ。褒めてあげる」 と小さく笑いながら言った。 その後、レイちゃんだけ残って実験を続けることになり、私とアスカさんは更衣室へ向かった。 アスカさんは手早く制服に着替え終わると、部屋の真ん中にある長椅子へ腰を下ろした。 そして、ずっと口を閉ざしていたが、私の着替えが済むとアスカさんは隣を手で軽く叩いて、 「マナ、ちょっとここに座らない?」 と言ってきた。
「うん、いいよ」 私は彼女の隣に座り、その横顔を見つめた。 少しの間、アスカさんは黙っていたが、 「アイツに負けちゃったわね。いつかはこうなると思っていたけど」 「……やっぱり、悔しい?」 「まあ、少しはね。でも、意外とそうでもないのよ。そりゃあ、悔しいけど、エヴァの操縦では アイツに負ける気はしないしさ。使徒に勝つにはシンクロ率の高い方がいいけど、それだけ じゃないでしょ?」 「うん、」 「結局はどうやってエヴァを動かすかってことだから」 と言ってから、アスカさんは私へ振り向き、 「やっぱり、シンクロ率に関しては才能によるところが大きいのかな。。アタシ、どうやってシン クロ率を上げればいいか、よくわかないもん」 「でも、シンジ君、このところ頑張ってたよ」 「……そうね。シンジにしてはよく頑張ってたわ」 「がんばってるシンジ君って、ちょっと格好いいよね?」 「……うん、」 と呟いた後、アスカさんは顔を真っ赤にして、 「あ、アンタさ、マユミと仲いいわよね?」 「アスカさんもマユミちゃんと友達だよ」 「そうだけど、マナの方がもっと仲がいいじゃない?」 「そう言われると、そうだけど」 「でさ、、マユミとシンジって、その、えーと、付き合っているの?」 と語尾を弱くしながらアスカさんは訊いてきた。 「付き合っていないよ」 「そ、そうなの?」 「マユミちゃん、そういうのは奥手だもん。告白なんて出来ないかも」 「じゃあ、シンジの方は?」 「シンジ君はどうだろ。マユミちゃんと仲いいけど、それが恋愛感情かどうかはちょっと疑わしい かな。シンジ君、そっちの方はお子様だから」
アスカさんはホッとしたように息を吐いて、 「そ、そうなんだ」 「……アスカさん、もしかしてシンジ君が好きなの?」 「えっ、あっ、ち、違……」 と否定しそうになったが、 「……そうかもしれないわね。自分でもよくわかんないんだけど、アイツのこと、すごく気に なるのよ。ここんとこ、ひとりになるとアイツのことばっかり考えちゃうし」 アスカさんは茹で上がりそうなくらい顔中が真っ赤になった。 「アイツ、昔と比べて変わったわよね?」 「そう? 前と同じだと思うけど」 「ううん、変わったわ」 とアスカさんは呟いてから、真剣な面差しで、 「話は変わるけど、使徒って、いったい何体いるのか知ってる?」 「えっ、なに急に?」 「使徒の数、少ないような気がしない?」 「私、そういうのよくわかんないよ」 「アタシも途中までしか知らないけど、ずいぶん少なくなってんのよ」 「途中まで?」 「えっ、」 と私が聞くと、アスカさんはあせったように、 「あっ、ドイツにいた時、使徒の数がいくつとか噂話を聞いたのよ」 「ふーん、そうなんだ」 なんだか釈然としないけど、それよりも私はアスカさんとマユミちゃんのどっちを応援すれば いいのか悩んでいた。 □月20日 〜中略〜 加持さん。最近、私のこと、放置してませんか?