霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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-M→R-

M→R(6)

    2016.4.13

     この頃、シンジ君の様子がおかしい。
     話しかけてもそっけないし、なんだか視線を合わせないような感じがするし、
     もしかしてワタシ、さけられている?

     原因なんて、全然思いつかない。

     今日なんて、いつもはみんな一緒に本部へ行くのに、シンジ君だけひとりで行っちゃうし。
     
     なんか落ち込むなあ。


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    2016.4.14

     いつまでもひとりで悩んでいてもしょうがないと、ワタシは思ったのよ。
     それで、エヴァの訓練が終わった後、シンジ君をつかまえて聞いてみた。
    「シンジ君、ワタシのこと避けてる?」
    「えっ、」
    「どうなの? 正直に教えて。もしワタシのこと嫌いになったなら、もう話しかけたりしないから」
    「ち、違うんだ。そんなんじゃないんだ」
     そうシンジ君は大声で言った。
    「じゃあ、どうして?」
    「……言わなくちゃ駄目?」
    「ダメ」
    「じゃあ、言うけど、あ、あのさ、ちょっと前に……、アスカとキスしたんだ」
    「えっ!!」
    「そ、そんなんじゃなくて、アスカは遊びって言ってた。だから、そういうんじゃないから」
    「……」
    「それでさ、なんか恥ずかしいのと、……ちょっと罪悪感みたいなのがあって、うまく話せなかった」
     ワタシは内心すごく動揺していて、一瞬気が遠くなりかけた。
    「惣流さんとは本気なの?」
    「だから、そんなんじゃないんだ。それに、アスカなんてキスの後、すごくうがいしていたし」
    「ひどーい」
    「あはは、実はかなりショックだったんだけどね」
     と言って、シンジ君は落ち込んだように肩を落とした。
     ワタシはシンジ君を励まそうと、
    「じゃあ、ワタシとキスしてみる?」
    「え、ええっ!! い、いいよ。だって、……えっ、……じゃあ、また明日」
     と言って、シンジ君は大あわてで帰っていった。
     ワタシはそんなシンジ君の後ろ姿を見送りながら。
    「ちょっと残念」
     と呟いていた。と、そんなことがあった今日だった。

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    2016.5.5

     病室でシンジ君の寝顔を見ていた。
     本当に戻ってきてくれてよかった。
     もう帰ってこないかもしれない。そう思わないようにしていたけど、心の中の片隅では
    考えてしまうこともあって、泣いてしまいそうにもなった。
     生きてる。
     それを感じたくて、シンジ君の頬にそっと触れてみた。
     とても温かく、静かな病室の中では彼の鼓動が伝わってくるようだった。
     そんな時、シンジ君のまぶたがぴくぴくと動いて、ワタシはさっと手を戻した。
    「……居てくれたんだ?」
    「うん、」
    「ずっと眠っていたような気がする」
    「うん、」
    「ずっと夢見ていた。ミサトさんやアスカもいて、みんながいて、母さんもいた」
    「うん、」
    「でも、夢はやっぱり夢で、今ここでこうしてまた会えて、本当によかった。ありがとう」
    「う、うん」
     ワタシは気の利いたことを何も言えなくて、ただ返事をするだけだった。
     しばらく、ワタシたちは黙っていたけど、ワタシはすこしぼやけて見えるシンジ君へ
    「もう黙ってどこかへ行ったりしないでね」
    「……うん」
     その後、惣流さんや葛城三佐もお見舞いに来て、病室の中は騒がしくなったけど、
    そんなこともどこか楽しいひとときだった。

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    2016.5.17

     今日、エヴァの訓練で待機中の時、惣流さんと二人っきりになってしまった。
     たぶん、二人っきりは初めてのような気がする。もともと、あまり親密という関係でもない
    ので、会話なんてあるはずもなく、とても気まずかった。おまけに、テスト装置が故障したと
    かなんとかで、数時間くらい二人っきり。 さすがに、惣流さんも思うところがあったみたいで、
    「アンタとこうして話すのって、初めて?」
    「そうかも」
    「ふーん。……アンタさ、一人暮らししてんのよね?」
    「えっ、そうだけど」
    「さみしくないの?」
    「もう慣れちゃった。ずっとひとりだったから」
    「ふーん、明日、晴れるかな?」
    「えっ、ええ?」
     話す内容が二転三転する惣流さんにワタシは思いっきり戸惑ってしまった」
    「降水確率20%で晴れとか天気予報で言っていたけど」
    「そうなんだ。……アンタ、いつも夕ご飯はなに食べてんのよ?」
    「えっ? えーっと、いつもは本部の食堂でカレーとかうどんとか、あと日替わりとか」
    「アタシんところは当番制で夕ご飯作ることになってんのよ」
    「そうなんだ」
    「そうよ。今日はミサトの番。でも、たぶんホカ弁ね。ミサト、料理をめんどくさがるから」
    「そ、そう」
    「アメリカの大統領、どっちが勝つかしらね」
    「って、なにそれ?」
    「なにって、大統領よ、大統領。そんなことも知らないの、アンタ?」
    「知っているけど、それで?」
    「それだけよ」
    「……あの、オチは?」
    「なにそれ?」
     なんだかどっと疲れてしまった一日だった。

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