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2016.6.6 今日は昼間からエヴァの訓練だった。ワタシだけね。 おかげで学校へ行けなかった。 とても残念。 そんなわけで夕方頃にお弁当を持って、部屋へ帰ったんだけど、ドアのノブに鍵が かかっていなかった。 おーっと、ワタシって、部屋の鍵を閉め忘れちゃうことがよくあるんだ。 だから、今回もそうかと思ったんだけど、なんだか部屋の中から声が聞こえる。 泥棒? ワタシはすかさず本部へ連絡。 しばらくして保安部隊の人と銃を片手に突入した。 そこにいたのはシンジ君と鈴原君で、なんだか知らないけど掃除してた。 あんまりにもびっくりしたみたいで鈴原君なんて涙目になっていた。 それからワタシもシンジ君たちも保安部の人にお説教をもらっちゃって散々だった。 でもねえ、掃除してくれたのはいいんだけど、女の子の部屋に黙って入っちゃうなんて 失礼よねえ。ぷんぷん どうせなら、言ってくれれば、ちゃんとご招待したのに。 明日からはシンジ君がいつ来てもいいように、お部屋をきれいにしておこう。 Comments(0) │TrackBack(0)
2016.6.7 昨日、鈴原君が四番目のチルドレンに選ばれたことを知ってしまった。 そのことは鈴原君にも伝えられたみたいで、学校ではとても不安そうな顔をしていた。 シンジ君はまだそのことを知らないみたい。鈴原君の様子が変だということには気づい ているようだったけど。 もしシンジ君がそのことを知ったら、どう思うだろう? たぶん、彼はシンジ君にとって一番の友達。 その彼がエヴァのパイロットになるのを、シンジ君は喜んだりしないんだろうなあ。 きっと、そう。 エヴァに乗って死ぬような目にも何度もあった。振り返ると、生きているのが不思議なくらい。 そんな立場に友達がなるのを、シンジ君はよく思うはずないもの。 ワタシはなにができるんだろう? お昼休み、校舎の屋上で鈴原君がひとりで居るのを見て、ワタシは会いに行った。 彼は遠くの山を見ながら、 「シンジは知らんのやろ?」 「うん、」 「さよか。あんたはシンジが心配なんや。そやから、シンジのことはまかすわ」 「どういう意味?」 「そういう意味や。わからんかったら、それでもええねん」 ほとんど会話らしいこともできなく、ワタシは屋上を出たら、そこに隠れるようにしてヒカリさ んが様子をうかがっていた。 きっと、彼女も鈴原君が心配なんだ。 顔を真っ赤にしながら違うって言うけど、そんなことないのはすぐにわかる。 どうして、みんな素直に感情を出せないんだろう。 でも、それはワタシも同じ。 Comments(0) │TrackBack(0)
2016.6.10 またいつもの病室。 シンジ君はベッドの上で眠っている。 そして、隣のベッドに鈴原君も眠っていた。 大ケガをした鈴原君はたぶんもう自分の足だけで歩くことはできないだろう。 でも、それでも生きているだけも良かったと思う。 ワタシはシンジ君の横顔を見つめていた。 今、なにを夢見ているんだろう。 鈴原君のこと? それとも、お父さんのこと? 鈴原君には悪いけど、ワタシはシンジ君が無事でよかった。 もしあのままだったら、ここにシンジ君はいなかったかもしれない。 だから、司令の判断には間違いはなかったと思う。 けれど、もっと他に方法はなかったのだろうか。 ワタシがもっとうまくできればよかったんだろうか。 「シンジ君、」 ワタシはまだ夢の中にいるシンジ君へ呼びかけてみた。 でも、やっぱりまぶたを開くことはなく、 ワタシは黙ってシンジ君から離れるしかなかった。 Comments(0) │TrackBack(0)
2016.6.13 「まだ生きてる」 ワタシが病室で目覚めた時、発した言葉がそれだった。 正直、死んでもいいと思った。 シンジ君が生きていてくれれば、それでいいと思った。 でも、今はもうシンジ君はいない。 エヴァの中に溶けてしまった。 またシンジ君はいなくなってしまった。 もういなくなったりしないでと約束したのに。 エヴァの中にはあの人がいる。 あのひとはシンジ君に会えたんだろうか。 Comments(0) │TrackBack(0)
2016.7.15 一ヶ月ぶりに会えたシンジ君にワタシはなにも言えなくて、 彼の病室へ運ぼうとしていた食事の用意と一緒に立ちつくしてしまった。 また会えてうれしい。 そう感じたことは確か。 でも、それよりもワタシはただただホッとしていた。 シンジ君はワタシの顔をしばらく見つめてから、 「ありがとう」 と言った。 「……前と同じ」 「……?」 「前も同じこと言った」 「あ、うん」 「ワタシもシンジ君の顔が見れてよかった。……でも、これでよかったの?」 彼はエヴァのパイロットを辞めたはずだった。でも、また再びここに、 「正直、よくわからないよ。あの時、トウジに殺されるなら、それでもいいと思った。 トウジを殺すくらいなら死んだ方がましだと思った。 ……でも、僕が死んだら悲しむ人がいることいることに気づいていなかった」 「ワタシも、この一ヶ月、とても不安だった。もう会えないのかと思うと、とても不安だった」 「ごめん。……でも、やっぱりまだよくわからないんだ。このままエヴァに乗っていいのか」 「ワタシは、なにも言えない。だって、なにを言ってもシンジ君にとって重荷になるもの」 「ごめん、」 それからシンジ君とワタシは黙ってしまい、食事のスープはすっかり冷え切ってしまった。 たぶん、シンジ君は優しいから、エヴァのパイロットを続けると思う。 でも、これでいいのかワタシにはわからない。 Comments(0) │TrackBack(0)