霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

鋼鉄のガールフレンド攻略 | 碇シンジ育成計画攻略 | サイトマップ

-第一部-
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12月25日その1

    今日はクリスマス。
    昨日はクリスマス・イヴ。
    でも、私は今、ひとりでマンションの部屋にいる。
    シンジや葛城さん、アスカさんは昨日からネルフ本部へ行っていて、まだ戻ってこない。
    葛城さんからの電話では何かトラブルが起こったということで、帰れないとのこと。
    事情を聞くために昔のスパイ仲間である加持さんへ電話したら、MAGIが乗っ取られたの
    どうのと、とても慌ただしかった。
    仕方がないから、私はダイニングのテーブルを前にずっと座っていた。

  「お母さん、」

    気づいたら、そう呟いていた。
    母が元気だった頃のことをふと思い出した。
    私は母子家庭の一人っ子で、いつも仕事から帰ってくる母を一人で待っていた。
    それはクリスマスイヴの日も同じで、夜遅くまで待つのは毎年のことだった。
    なんとなく、今の私はその時の気持ちと同じ。
    クスッと、私は小さく笑った。
    そんな気持ちになるなんて、みんなが家族になったということなのかなと思った。
    なんだか心が温かくなるような。
    と、その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。
    もう昼下がり。
    シンジたちが帰って来たと思って、私はスリッパの音を立てながら玄関へ向かった。

  「綾波さん、」
  「……」

    玄関の前に立っていたのは綾波さん。

    あまりにも意外な人が来たことに、私は放心状態になっていた。

  「どうしたの?」
  「あっ、ううん。綾波さん、いらっしゃい。さあ、入って」

    と言ったら、綾波さんは私に右手を向けた。

  「これ、」
  「クリスマスケーキ?」
  「そうらしいわね」
  「どうして?」
  「クリスマスにはケーキを食べるんでしょ?」
  「うん、」
  「なら、問題無いわ」

    綾波さんがケーキを買ってきてくれたことに、私はとってもうれしくなって、

  「あ、ありがとう」
  「……いい、安かったから。半額だもの」

    その答えにはちょっとずっこけちゃったけど、やっぱりすっごくうれしかった。
    それから綾波さんとふたりでシンジたちを待っていたけど、気まずさはなくて、
    ぽつぽつと話しをしたりした。

  「みんな、遅いね」
  「そうね。でも、すぐに帰るから、私にここで待っているようにと葛城三佐は言っていたわ」
  「ねえ、綾波さん」
  「……なに?」
  「綾波さんはシンジのことが好きなの?」
  「碇君は私が守るべき人。司令にも頼まれたもの」
  「えーと、なにを?」
  「碇君とこれから一生ずっと一緒にいるようにって。孫の顔も見たいと言っていたわ」
  「……」

    あの髭は何を言っているの、と私は頬をピクピクさせていた。

  「あ、綾波さん。それって、命令ってこと?」
  「命令? そう、そうかもしれない。でも、碇君と一緒にいたいのは私の気持ち」

    と言って、綾波さんは頬を薄く染めた。
    その恋する少女のような表情に、私は見惚れるのと同時にとっても焦った。
    もし、この調子で綾波さんがせまったら、シンジはくらくらっとなっちゃうかもと。
    と、その時、

  「ただいま〜」

    と、玄関から声が聞こえた。
    この声はアスカさん。すぐに、そっちの方から足音が聞こえて、リビングで炬燵に
    入っている私たちへアスカさんは顔を出した。

  「あら、ファースト。もう来てたの?」
  「……お邪魔してるわ」

    アスカさんと綾波さんは暫しにらみ合うようにしていて、私はハラハラしていた。
    しかし、アスカさんはすぐに笑顔を戻すと、

  「まあ、いいわ。今日はクリスマスだもんね。アンタとも今日くらいは仲良くして
   あげるわ。で、ハイ。ケーキ、買ってきたわよ」
  「えっ、!」

    アスカさんは炬燵の上にケーキを置いた。それも特大のフルーツケーキ。
    ちなみに、綾波さんが買ってきたのはチョコレートケーキだ。

  「帰りにケーキ屋さんの前を通ったら、バーゲンセールをしていたのよ」

    と言ってアスカさんは微笑むけど、私はちょっと悩んでいた。
    でも、今日は綾波さんもいるし、何とかなるかなとも思っていた。
    そして、炬燵に入って顔を合わせている私たち3人娘。
    やっぱり空気は和やかで、蜜柑を食べていたりしていた。
    さっきの綾波さんのこともあり、私はアスカさんに本当の気持ちを訊いてみたくなった。

  「アスカさん、」
  「あによ?」

    と、蜜柑で口をモグモグさせながらアスカさんは私を見る。

  「アスカさんはシンジのことが好きなの?」
  「ぶっ、」

    アスカさんは驚き、吹き出してしまった。
    おかげで私の顔には蜜柑の粒がいっぱい。
    でも、アスカさんはそんなことに気づく余裕もなく、

  「あ、あ、アタシがバカシンジなんて好きなわけないじゃない」
  「碇君は馬鹿じゃないわ」

    と、すかさず綾波さんが口を挟む。

  「バカよ。それも大バカ。あんなバカ、アタシが好きになるわけ無いじゃない」
  「碇君は馬鹿じゃないわ」
  「バカって言ってるでしょ」
  「アスカさん、綾波さん、ケンカは止めましょう。今日はクリスマスなんだから」
  「そうね、」
  「……」

    一瞬、険悪な空気になりかけたけど、それはすぐ元に戻り、でも私はもう一度きいた。

  「じゃあ、アスカさんはシンジのことが好きじゃないんだ?」
  「そうよ。あったり前じゃない」
  「……」
  「でも、シンジはアタシのものよ。シンジは私の下僕。だから、誰にも渡さないんだから。
   いい、アンタたちもそこんとこ、よーく肝に銘じておきなさい」
  「いや、」

    と、綾波さんが間髪入れずに答えた。

  「碇君と一緒にいるのは私。あなたじゃないわ」
  「なんですって!」