-第一部-
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今日から3学期。 3年生までの短い間だけど、がんばろう。 と思って、ちょっとだけ早く登校したら、廊下でヒカリちゃんにバッタリあった。 隣には知らない制服を着た女の子がいて、私が興味深そうに見つめていたら 「あっ、マナちゃん、紹介するね。今日からクラスメイトになる山岸マユミさんよ」 「山岸マユミです。よろしくお願いします」 と、その子は小さなか細い声で挨拶してきた。 私は笑顔を作って、 「私、霧島マナ。マナって、呼んでね」 と言ってから、握手しようと右手を出した。 山岸さんは眼鏡の奥にある黒い瞳で私の右手を見つめていたけど、小さく頭を下げて 歩き出してしまった。 ヒカリちゃんと私はちょっと困ったような笑いを浮かべてから、彼女の後を追い掛けた。 私も転校してきた時はかなり緊張したことを思い出したりもした。 あの時はスパイという任務でもあったし、シンジに嫌われたらどうしようとか考えていたのよね。 でも、結果オーライだったかな。 それにしても山岸さんの長い黒髪はきれい。 私なんか茶色い癖っ毛だから、よけいに憧れてしまう。 シンジなんて、授業中に山岸さんを眺めていることが多いし、そりゃあ転校生だから気になる のはわかるけど、ちょっとは私の気持ちも考えてほしいな。ぷんぷん そういえば、山岸さんって、ベージュのサマー・ベストを着ているのよね。 けっこう暑いのに。あれって、やっぱり下着が透けて見えないようにということなのかな。 私なんかもう慣れちゃったのに、山岸さんって恥ずかしがり屋さんなのね。 山岸? どこかで聞いたことがあるような。まあ、いいや。