霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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-第一部-
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Δ月Θ日

    いつものようにシンジたちはネルフ本部で訓練。
    私はというとクラブ活動が終わってから、夕食の用意を買いにスーパーへ寄った。
    シンジたちが帰ってくるのは9時頃だけど、そんなに余裕はなく、急いで店内を回った。

  「……?」

    知っている女の子の姿がふと目に留まった。
    ヒカリちゃんだ。
    すっごく真剣な眼差しで見ているのはチョコレートの山。
    なんだか声を掛けづらくて、ちょっとヒカリちゃんの後ろ姿を見つめていたけど、
    不意に彼女が周囲へ視線を回し、私と目が合ってしまった。

  「……」
  「……」

    私は思わず困ったような笑みを浮かべ、ヒカリちゃんは顔を真っ赤にして俯いた。
    10秒か20秒ほどそのままで、それから私は彼女の方へ歩み寄り、

  「もうすぐバレンタインデーだね」
  「……うん、」
  「チョコレート選んでたんだ?」
  「ううん。違うの。私、料理を作っていて、ちょっと買い忘れた物を思い出して、だから……」

    恥ずかしそうに俯いていた顔が上がり、ヒカリちゃんは早口でしゃべった。
    でも、途中で言葉は止まってしまい、

  「……」
  「このチョコレート、美味しそう」

    私は彼女の横へ行くと、チョコレートを一つ手に取った。

    それは一口大のチョコレートが箱に詰まったもので、口の中で溶けそうな感じだった。

  「そうでしょ。私もこれがいいかなって」

    一瞬にして、ヒカリちゃんの口もとに笑みが浮かんで、私も一緒に微笑んだ。

  「ねえ。マナちゃんは碇君にあげるの?」
  「うん。あげるよ。そのために私、お小遣いを貯めているんだ」
  「手作りじゃないの?」
  「私、お菓子とか上手に作れないから。それに私だったら美味しいチョコレートを
   もらった方がうれしいから」
  「でも、男の子は手作りの方が喜ぶんじゃないかな?」

    と、ヒカリちゃんは言った。
    やっぱりシンジもそうなのかな?
    でも、手作りと言っても型にチョコを流し込むだけだし、それだったら私は美味しい
    チョコの方がいいけどなぁ。

  「う〜ん、手作りは来年にしようかな。ねえ、ヒカリちゃんは誰かにあげるの?」
  「えっ! わ、私はそんな人いないし」
  「え〜、あんなに真剣にチョコを見ていたのに?」
  「だ、だから、それは……、バレンタインデーに告白なんて恥ずかしくてできないもん」

    ヒカリちゃんの性格ならやっぱりそうよね、と私は思った。

  「バレンタインデーって、やっぱり恋人がいる人たちのイベントよね」

    と私が言ったら、ヒカリちゃんは少し恨めしそうな目で、

  「マナちゃんは碇君がいるから」
  「シンジはそうだけど、ライバルも多いんだよ。アスカや綾波さんなんて強敵だもん」

    自然に私の声も沈んだものになって、暫し私たちの間に沈黙が流れた。
    けれど、ヒカリちゃんが少し笑顔になって、

  「あっ、でも、恋人がいなくてもバレンタインデーは楽しいよね。友達同士でチョコを
   食べたり、学校もなんかいつもと違う感じで楽しいし」
  「うん、いつもは買えないような高級なチョコをみんなで食べたりするんだよね」

    そして、私たちはまた微笑みを浮かべた。
    それからチョコを手に取って、あーだこーだと言い合っていた。
    で、次はどれにしようかなとチョコへ手を伸ばしたら、隣の人と肩がぶつかってしまった。

  「あ、ごめんなさい」
  「私こそ、すいません」
  「あっ!」
  「えっ、」

    聞き覚えのある声は山岸さんのものだった。
    彼女もビックリしたみたいで、眼鏡の奥にある瞳が大きく見開いていた。

  「あ、あの、私、……」

    私は山岸さんへにっこりと笑みを送って、

  「山岸さん。バレンタインデーに私たちと一緒にチョコを食べない?」
  「えっ、」

    ヒカリちゃんへ目を向けると、うんと言うように彼女は小さく肯いた。

  「みんなで持ち寄って、いろんなチョコを食べるの。すっごく美味しいと思うよ」
  「…………私も入れてもらっていいんですか?」

    かろうじて聞き取れるくらい小さな声で山岸さんは訊いてきた。
    私は元気いっぱいに、

  「うん。もっち、当然よ。ねぇ、ヒカリちゃん?」
  「ええ。山岸さんのチョコ、とっても楽しみ」

    山岸さんは頬を薄く桃色に染めて俯くと、

  「ありがとう」

    と小さく答えた。
    私は心が楽しくなって、

  「もう一年分のチョコを食べちゃおう。みーんな、覚悟しといてね」
  「いいけど、マナちゃん。太るよ」

    ヒカリちゃんの鋭いツッコミに私は、

  「うっ、」

    と言葉を失って、手に持っていたチョコを落としてしまった。

  「ぷっ、」

    小さな笑い声が聞こえた。
    見ると、山岸さんが手を口に当てて吹き出しそうになるのを一所懸命にこらえていた。
    山岸さんの笑い顔を初めて見たような気がした。
    でも、そんな彼女の表情はとってもかわいかった。
    いろんな意味でバレンタインデーは今からとっても待ち遠しいなぁ。