-第一部-
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今日の掃除の時間、廊下でアスカとヒカリちゃんがモップを持ちながら、 何か言い争いしているのを見つけてしまった。アスカの「絶対にイヤ」って いう大声も聞こえる。私は二人に近づいて、 「ねえ、どうしたの? ケンカはよくないよ」 「アンタ、いいところに来たわ。聞いてよ。ヒカリがアタシにデートのお願いをするのよ」 「デ〜ト!?」 「……うん。お姉ちゃんから頼まれて」 と、ヒカリちゃんは申し訳なさそうに言った。 「だいたい、なんでアタシが顔も知らない話したこともないヤツとデートしなくちゃならないのよ。 最低でも本人がデートの申し込みに来いっつーの」 『うん、うん』と私は思わず心の中で肯いてしまった。 「それにアタシは、今度の日曜は忙しいのよ」 「何か予定あるの?」 「……そ、それは、」 ヒカリちゃんの問いにアスカは頬を真っ赤にして口ごもってしまった。 私はちょっと探るような目で、 「デート? じゃないよね」 「違うわよ! ア、アタシは、その、準備があるから。……チョコレートを作らなきゃならないの」 「あー、そういうこと」 やっぱり、みんな想いは同じなのよね。私もガンバらなくちゃとちょっと焦った。