-第三部-
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今日も街に繰り出してショッピングやら、食事やら。 ただし、綾波さんは「暑い」と言って来なかったので、私とアスカとシンジの三人のみ。 交差点で信号待ちしていると、突然となりのシンジがガクガクと震えだした。 何!? 日射病? 数秒後、何と、アスカまで慄然として道路の向こうを見ている。 二人ともどうしちゃったの? 信号が青になるやいなやシンジは飛び出していき、向こう側の歩道にいる男の子に大声で呼びかけた。 「カヲル君!!」 「誰だい? 君は」 カヲルと呼ばれた少年は青い髪に赤い瞳(近寄ってみると分かった)、 そう、綾波さんと似た風貌だった。 ただ、綾波さんに比べてなにか冷たい感じがする。私にはそう見えた。 「僕のことを忘れたの? シンジだよ。碇シンジだよ!」 シンジの顔がひどく青ざめている。 「あんた、シンジに殺されたんじゃなかったの」 アスカがギクリとするようなことを言う。 「ああ。ごめんよ。覚えていないんだ。僕は二人目だから」 シンジの目に衝撃が走る。 「なにわけわかんないこと言ってんのよ!」 「いや、アスカ。いいんだ」 シンジは、今にもカヲルという人につかみかかりそうなアスカを腕で制し、 「ごめん、アスカ、マナ。僕は気分が悪くなったんで帰るよ」 と、片手で頭を抱えながら言った。 「あんた、大丈夫?」 「ああ」 そして、気がつくと、そのカヲルという人もどこかへ行ってしまった。
家に帰ってカヲルという少年に会ったことを報告したときの ミサトさんの険しい表情が忘れられない。なんというか、とてもイヤな感じのする、 今まで私に見せたことがない表情だった。 「なんですって!? 渚カヲルに会った? …………そう。分かったわ。ちょっと一人にさせてちょうだい」 ミサトさんはそう言うと、シンジと同じように頭を抱えて自分の部屋へ入っていった。