-第三部-
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最近、気が滅入ることばかりでいけない。 私は、気分直しに初めてシンジの家に遊びに行くことにした。 (前にも書いたけど、シンジは今、ミサトさんの家を出てお父さんと暮らしている) 「どうぞ」 シンジが照れながら迎えてくれる。 「おじゃましまーす」 ミサトさんのマンションより立派かも。ミサトさん、車貧乏だからね。 「今、お茶淹れるから」 「あっ、おかまいなくー」 ままごとのように応対する私たち。 「お父さんは、今日、いないんだよね?」 「うん」 「二人きりだね、私たち」 「うん。…………そうだね」 「シンジの部屋見せて」 「い、いいよ。散らかってるけど……」
私はシンジの部屋に入るなり、机の上に置いてあるペンダントを見つけた。 これは初めて会った頃、私があげたペンダントだ。 「まだ、持っててくれたんだ、うれしい」 「実は、あのとき…………」 あのとき? 私はフラッシュバックのようにムサシが私を守って死んだことを思い出した。 「マナが、そ、その……死んだと思っちゃって…… これ、芦ノ湖の畔に埋めに行ったんだけど…… マナが生きてると分かって、もう一度掘り返しに行ったんだ」 うれしくて、涙が出そうになる。 「…………埋めた場所探すの大変だったでしょ」 「うん。でもマナからもらった大切なものだからね」 「うれしい、シンジ。ありがとう」 そう言って、彼の胸に顔をうずめた。 彼は、いったん強く抱きしめた後、 私の頬に手を添え、顔を引き寄せて優しくキスしてくれた。 幸福感に浸る。 しかし、アスカのことを思い出し、少し胸がチクリとした。