-第三部-
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抜け駆けみたいなことをしてしまって、ちょっと反省。でも、後悔はしていない。 恋の戦いには仁義はないんだもんね。 いつものメンバーで新熱海海岸に海水浴に来ている。 私の水着はオレンジ無地のホルターネックワンピース。アスカは赤いビキニ。 綾波さんは白のワンピース。シンジは……、シンジの水着はどうでもいいよね。 ヒカリちゃんも誘ったんだけど、来なかった。 アスカの話では鈴原君とデートらしい。うぐ……。 そのかわり、今日はミサトさんが一緒。ただし、 トシを考えて水着はやめとくって。まさか、太ったのかな? そうは見えないけど。 こうして、私たちは少しだけ開放的な気分で砂浜へと駆けだした。 その時だった…………
突如、新熱海海岸に轟音が響き渡る!! 「何事!?」 焼きイカを取り落として叫ぶアスカ。 あちこちで悲鳴があがり、海水浴客たちが散り散りに逃げていく。 この独特の作動音は、まさか………… 激しく波を涌きたてながら、水中から巨大な物体がせり出してくる。 なんと、それは、私も昔乗っていたトライデント、戦自の陸上軽巡洋艦だった。 なぜ? 今、ここで? やがて耳をつんざく轟音が止むと、ハッチが開き、パイロットが降りてきた。 彼は…………。 彼は、そう、あまり親しくはなかったけど確かに見覚えがある。 パイロット候補生時代の戦友だ。 「マナ!!」 そのパイロットは私の名前を呼んで、そして、砂浜に倒れ込んだ。 急いで駆け寄って、かかえ起こす。ひどい怪我をしている。 「しっかり!」 「マナ、モニターに君の姿が映ったので浮上したんだ」 「ごめんなさい。あなたの名前を思い出せないの」 「いいんだ。聞いてくれ、マナ」 彼の話はこうだった。 戦自の一部が軍事クーデターを起こそうとしたのだ。 反乱軍はエヴァ初号機及び、弐号機を駆り、まずは現状でエヴァに対抗しうる 唯一の兵器であるトライデントをすべて破壊せんと部隊を急襲。 仲間はほとんどやられたが、彼だけがかろうじて逃げてきたのだという。 「でも、エヴァは……チルドレンにしか動かせないのよ? いったい、どうやって?」 私が尋ねると、 「ダミープラグね」 ミサトさんが口を挟んだ。 「詳しいことは分からない…… ただ、二機のエヴァンゲリオンが動いているのははっきりと見た」 そのパイロットは苦しそうに言った。 「マナ、連中を止めてくれ。もう、君だけしか残っていない……」 それだけ語って、彼は気を失ってしまった。 ミサトさんは車から持ってきた携帯無線機でしきりにどこかと通信している。 「やはり、ゼーレのダミーシステムは破壊されずに戦自に引き継がれていたのね」 「畜生、胸クソわるい!」 「ええ、渚カヲルが再び現れたときに全てに気がつくべきだった」 「彼らはどこかの工場でまだ作り続けているのよ。魂のない肉体を」