霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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-第三部-
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戦月争日その2

    数時間後。
    反乱軍のエヴァ2機は、いまや首都となった第三新東京市に迫っている。
    要求が通らない場合には住民の巻き添えも厭わないという。
    政府はJA改というロボットで対抗しようとしたが、ほとんど足止めにもならなかったらしい。

    私は、命を弄び、命を踏みにじる反乱軍、そして戦自そのものへの怒りが心の底からこみあげてきた。

  「私、行きます」
  「だめだ!」
    私に飛びかかってでも止めようとするシンジの手をかわし、
    トライデントのハッチへと走る。
  「マナ、行っちゃだめだ! だめだぁぁっ!!」
    ミサトさんに腕を引っ張られ、私を追ってこれないシンジは狂ったように叫んでいる。
    ダミープラグのせいで鈴原君を危険な目に遭わせた記憶がそうさせているのだろう。
    ごめん、シンジ。

    私は、コックピットに滑り込むと、全ジェットノズルを作動させ機体を浮上させた。
    ノズルを徐々に水平にして飛行モードに移行すると、全速で第三新東京市を目指す。
    震動は相変わらずで、内臓すべてを揺さぶられるようでとても気持ち悪い。

  「マナちゃん、聞こえる?」
    ミサトさんの声だ。
  「はい、聞こえます」
  「目標現在位置はN35°14’ E139°01’よ」
  「了解。目標現在位置N35°14’ E139°01’予想会敵時刻は6分03秒後です」
  「了解。目標を視認したら必ず弐号機、赤い方ね、のケーブルが繋がったビルを破壊して」
  「了解。弐号機の電源ビルを第一ターゲットに設定します」
  「それからね、弐号機自体には目もくれずに周囲の電源ビルを全て破壊していくの」
  「わかりました。外部電源を断って、活動停止に持ち込むんですね」
  「そうよ。で、問題は初号機。コイツはS2機関を搭載してて活動限界がないから、
   トライデントで停止させるのは不可能よ。今、対策を審議中だから、ちょっち待っててね」
  「了解。弐号機撃破に専念します」

    ………
    ……
    …

    あっという間に目標を視認できる距離まで到達した。
    作戦どおり、電源ビルをミサイルでロックオンし、破壊していく。
    周囲の全ての電源ビルを破壊し、しばらく遠巻きにしていると弐号機は停止した。
  「ナイス、マナちゃん。ま、所詮、なーんにも考えてないダミープラグだからねー」
    ミサトさんは何故、戦いの最中にこんなに明るいんだろう。

    そっか、私を勇気づけるために決まってるよね…………。

  「弐号機活動停止。初号機撃破に向かいます」
  「待って、マナちゃん! 初号機はムリよ!」
    ミサトさんが叫ぶ。
    しかし、初号機はもはやほとんど暴走状態で、
    第三新東京市を手当たり次第に破壊している。なんとかして、止めないと。

    しかし、トライデントの主砲による遠距離射撃では、ATフィールドを貫通できる見込みは全くない。
    やるならば近距離、しかも、一度発射すると再発射に1分近くかかる……。

  「マナ、連中を止めてくれ。もう、君だけしか残っていない……」
    今も昏睡しているであろう先程の少年の顔が脳裏に浮かぶ。

    やるしかないわ。
    私は、機体をエヴァ初号機の側面300メートル程の位置にもっていくと、
    ポジトロン砲にエネルギーを充填する赤いスイッチの蓋を開け、押した。

  「命令よ! 攻撃を中止しなさい!」
    コックピットにミサトさんの声が響き渡る。
    ブゥーンと音を立てて砲身が青く光り出す。
    エネルギー密度を表すメーターがのろのろと上がっていく。
    ……いつもより数段遅く感じられる。
    私は歯ぎしりしながらエネルギーが充填されるのを待った。

    数十秒後、ようやく発射可能のインジケーターが点灯した。

  「発射!」
    トリガを引く。
    青い光線がエヴァ初号機へと伸び、一瞬の閃光の後、轟音が鳴り響いた。

    濛々と立ちのぼる爆煙が消え去ると…………。
    そこには、全く損傷を受けていない初号機の姿があった!

  「ぐおぉぉぉォォーーーーーー」
    雄叫びを上げなら初号機がこっちへ向かって来る。逃げ切れない。

    死んだ。

    そう思った刹那、
    赤い巨人が私の前に立ちはだかり、ガキィーンと金属音をたてて初号機を受け止めた。
  「遅くなってゴメン、マナ」

    …アス…カ………?

  「よっしゃー、間に合ったー!」
    無線機から再びミサトさんの声。
  「説明してる暇はないわ。アスカ、初号機のATフィールド中和を開始して!」
  「了解! まかせといてっ!」
    アスカの弐号機は初号機の前で分厚いビニールを引き裂くような動作をしている。
  「マナ、ポジトロン砲のエネルギー再充填急いで!」
    と、アスカ。
  「いい、マナちゃん。初号機胸部中央を狙い撃ちするのよ!」
  「了解!」
    ブゥーン。再び青い光が集まり出す。
    アスカの弐号機が初号機に組みついてなんとか押さえてはいるが、
    長くは持ちそうにない。

  「マナ! まだなの!?」
    アスカの焦る声が聞こえてくる。

  「エネルギー充填完了!」
  「今よ!」
  「発射!!」
    青い光芒は、今度は初号機の胸を貫き、遙か彼方まで伸びていった。

  「やった! 胸部装甲板を貫通したわ!」
    ミサトさんが歓喜の声を上げる。

  「コア破壊を確認。初号機、完全に沈黙しました」
    ミサトさん以外のオペレーターの声まで。一体どういうこと?

written by Adrienne ◆HI8ebVe8lo

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