-第四部-
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「ねえ、ねえ、依然強い勢力を保ったまま、 伊豆諸島・青ヶ島付近を北上中なんだって!」 お昼からずっと、アスカはテレビにかじりついて、 私たちに刻一刻と台風情報を教えてくれている。 「中心付近の気圧は942ヘクト・パスカル、最大風速は40メートルだってよ!」 「中心から半径300キロ以内では風速25メートル以上の強い風が吹いてるって」 「うひゃー、大島じゃ現在までの雨量が 400mm 超えたって」 「うーん、台風から湿った空気が流れ込んで前線が活発になってるのよねぇ♪」 顔を見合わせる私とミサトさん、とペンペン。 「ねぇ、アスカ、もしかして台風が珍しくて興奮してるの?」 「バ、バカねぇ、そんなわけないでしょ。このあたしがたかが台風ごときで」 ちょっと赤面するアスカ。図星みたい。 「ま、無理もないわ。ドイツには台風なんて来ないもんね」 「そ、そうなのよ。だから、アジアモンスーン気候の脅威がどれほどのものか ちょっと見てやろうってわけ」 「モンスーンっつっても、今じゃ常夏だけどね」 ……… …… … 宵の間。 もの凄い雨・風が吹き荒れる。とうとう新熱海に上陸しちゃったみたい。 テレビの画面では真っ直ぐ箱根の方角へ向かっている。やばい、直撃コース? ヒューッ…ガタッガタッ、ガタン、ゴンッ! 「Oh mein Gott! なに?! 今のゴンッって音は?」 怯えるアスカ。 「ああ、どっかの看板が剥がれて飛んできたんでしょ。よくあることよ」 ミサトさんがこともなげに言う。 「よくあるって……。ったく、近所迷惑もいいとこだわ」
突然、真っ暗になった。 「えっ、何? 何?」 「あー、停電ね。ま、仕方ないわね。使徒に壊されまくったもんだから、 第三新東京市の送電システムはボロボロなのよ」 「ったく。基礎的なインフラさえいまだ復興できてないなんて、 この国の社会施策プライオリティはどうなってるのかしら」 って、アスカ? 口ではキツいこと言いながら私にしがみついてくるのはなぜ? 怖いの? ヒューッ…ガタッガタッ…ビュォォーー…… 依然、風雨の声はものすごい。 一瞬、辺りが青白く光ったかと思うと、バリバリバリッと雷鳴が轟く。 "Oh, es läßt mein Haar stehen am Ende...." アスカはずっと私に抱きついている。カワイイ……♥ って、あれ? ミサトさん? 「いやぁ、あたしも暗いのちょっと苦手でさ……」 ミサトさんまで私の腕にしがみつく。 何なの、この人たち……。 漸く明かりがついたのは夜も半ば過ぎた頃だった。 まったく、あぶなく何かに目覚めてしまうところだったよ。
338 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2006/08/24(木) 23:23:42 ID:??? 職人様、乙です。 ここ最近新作が立て続けに貼られてて非常に嬉しい。 今まで長いこと待ってきたかいがあったというもの。