霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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-第四部-
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晩月夏日

  「"Kannst du erraten, was ich essen will?"(今、あたし、何が食べたいと思う?)」
    アスカが唐突にドイツ語でなにやら問いかけてくる。
  「……バ、バウムクーヘン?」
  「"Genau!"(その通り!)」
    私のドイツ語通じたみたい。

  「さ、作りましょ」
  「えっ? 何を?」
  「バウムクーヘンに決まってるでしょ」
  「バウムクーヘンって買ってくるものじゃないの? お家で作れるの?」
  「大丈夫、半筒形なら簡単らしいわ」
  「らしいわ、って、作ったことないの?」
  「ないわよ。だから挑戦するんじゃない」
    と、私に泡立て器を手渡すアスカ。

  「まずはボールにバターと砂糖を入れて白っぽくなるまでかき混ぜる」
  「卵黄を1個ずつ入れて丁寧に混ぜていく」
  「卵白に粉砂糖を混ぜてツノが立つくらいに泡立てる」
  「薄力粉とさっきのやつを半量加えて、さらに混ぜる……」
    ちょっと、アスカ、全部私にやらせてるじゃない……。

  「型にバターを塗り、タネを薄く流し込む、と」
  「熱したオーブンに入れて、焼き色がついたらまたタネを流し込む」
  「焼いては流し、流しては焼き……層を作っていく。もう、メンドクサイわねっ」
    面倒なのは私だよ……。
     
    最後に湯煎で溶かしたチョコレートを塗っていく。

  「できたっ!」
    切ってみると、ちゃんと層になってる。しっかりバウムクーヘンだ。半筒形だけど。
  「あーら、美味しそうじゃない」
    さっそく一口つまむミサトさん。
  「うん、おいしい」
  「本当? よーし、全部切り分けちゃおう」
    アスカは、できたてのバウムクーヘンに包丁を入れてキレイに切り分けると、
    三切れづつ二つのお皿に取ってラップをかけた。
  「これはシンジとファーストにおすそ分け」
  「えらいっ、アスカ。シンちゃんはともかく、レイにもちゃんとあげるなんて、友達思いだね〜」
  「なに言ってんのよ。いつもわびしくカップラーメンかなんか啜ってるアイツに
   家庭の味ってやつを見せつけて自慢してやるのよ」
    例によって、とっても天の邪鬼な反応を示すアスカ。
    まぁ、お菓子作りの腕前を自慢するつもりなのは、あながち嘘じゃないみたいだけど。
     
  「家庭の味か……」
    ミサトさんがポツリと呟く。

  「…………やぁねぇ、なぁにしんみりしちゃってるのよ。
   ささ、お茶淹れて、バウムクーヘン食べましょう。そだ、あたしはブランデーでいただこうっと」
    急に多弁になるミサトさん。
     
  「うん、おいしいじゃない」
  「おいしいね」
    口々にそう言い合ってバウムクーヘンを頬張る。

    家庭。
    家族の集うところ。
    そう、私たちは本当の家族ではないけれど、私たちを結びつける絆は本物。
    私は、なぜ私がシンジばかりでなく、アスカやミサトさん、
    そして綾波さんに強く惹かれるのか分かった気がした。
    孤独という共通項が私たちを結びつけ、お互いをかけがえのないものにする。そうに違いないわ。

written by Adrienne ◆HI8ebVe8lo

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