-第四部-
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私のシンジへの想いは日々深まってくる。 最初はスパイするために近づいた罪悪感の反動だったかもしれない。 でも、今ははっきり言える。私はシンジが好き。 放課後。 「今日もいい天気だね」 「そうだね」 最近、私とシンジはよく二人で屋上にいる。 そういえば、初めて会った頃、ここであのペンダントをシンジにあげたんだっけ。 あれから色んなことがあった。 そして、彼は今でもペンダントを大事にしてくれている。 「シンジ……」 私は甘えるように彼にもたれかかった。 彼はいつだったかと同じように優しく私を抱き寄せ、そしてキス…… 「あーら、仲のおよろしいことで」 急に背後からアスカの声が。……見てたの? 「やれやれ、日本では珍しい人前キスですか。お熱いわね〜」 「だって、誰もいないと思って」 「ごめんなさい、アスカ……」 思わず口から出た言葉が"ごめんなさい"だった。 アスカの顔から笑いの表情が消える。 「なんであんたが謝るの?」 「だって、アスカの気持ち知ってて、私………」
「うぬぼれるんじゃないわよっ!!」 アスカは私の頬を平手で強く叩いた。 「アスカ!」 シンジが厳しく咎めるような口調でアスカの名を呼ぶ。 「ふん。あんたたちがどうなろうと、あたしの知ったことじゃないわ」 そう言って踵を返すと、去っていくアスカ。 私はただ、呆然と腫れた頬に手を当てていた。 「アスカ! マナに謝まりなよ」 シンジはアスカを追いかけていく。 私は一人、屋上に取り残された。 数分後。 「アスカ……シンジ……アスカ……」 とりとめもなく思いを巡らしながらぼんやり遠くの山を眺めていると、 背後に人の気配を感じた。 「シンジ?」
振り返ると、鈴原君だった。 「悪いと思うたけど、今の、見とったで」 「そう、なんだ……。私、どうすればいいのかな」 「……迷うことあらへん。シンジが好きならシンジのことだけ見てたらいいんや。 惣流に遠慮して身を引いたりしたら一生後悔するで」 「うん」 「それにな、そないなことになったら、惣流かて不本意な筈や」 「………………」 「なんや。どないしてん?」 「……鈴原君がそんなこと言うの少し意外だったから」 「ああ。ガラにもないこと言うてもうたわ」 「ありがと……」 私は、少し涙ぐみながらお礼を言った。 「罪なやっちゃ……」 去り際に鈴原君がそう呟くのが聞こえた。