-第四部-
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私は今、戦自の巡洋艦に乗っている。 米・中連合軍はマリアナ諸島グアムの戦自基地を攻撃、 一方、戦自の太平洋艦隊はニューギニアに向けて既に出撃したという。 ミサトさんはニューヨークで拘束されてしまった。 そして、私にはまたしても戦自から出頭命令が来た。 戦自はエヴァンゲリオンを使ってニューギニアに集結している米・中連合軍を叩き、 一挙に戦局を有利に展開する計画だが、作戦の要であるエヴァンゲリオン弐号機のパイロット、 つまり、アスカが、頑なに命令を拒否しているそうだ。 そこで、アスカに最も親しいとされる私が説得を命じられ、 冒頭に述べたように巡洋艦に乗って、先発した太平洋艦隊を追いかけているというわけ。 実は、私はアスカにエヴァで米・中軍と戦うように説得するつもりはまったくない。 ただ、もう一度アスカに会う、その為だけに戦自の命令に従っているフリをしている。 あんな風に、気まずく別れたままってのがすごくイヤだったから……。
一昼夜が過ぎ、太平洋艦隊に追いついた。アスカの居る護衛艦へと乗り移る。 アスカの部屋の前には憲兵が二人、立哨していた。 「久しぶり……だね」 「久しぶりね、マナ。何しに来たの?」 「戦うように説得しろって言われて……。でも、そんなことどうでもいいよ。 本当は、アスカの顔が見たくて来たの」 「どうでもいい、って、この部屋は盗聴されてるのよ。 嘘でも説得するフリくらいしないと、あんたの立場が悪くなるわよ。 ま、いいわ。みんなどうしてる? ミサトは?」 「ミサトさんは、アメリカで拘束されたって」 「ふーん。あの人も色々大変ね」 「ねえ、アスカ……、あの……」 「なによ?」 「戦うのを拒否してる理由って、アスカがアメリカ国籍だからなの?」 「そんなの関係ないわよ。あたしはエヴァに乗れりゃなんだっていいの。 でも、弱いものイジメはまっぴらよ」 「弱いものイジメ?」 「そ。エヴァで軍艦だの戦車だのをやっつけるのって弱いものイジメでしょ。 そういうの、性に合わないの」 「そっか、アスカらしいね」 それからしばらく雑談した。 アスカが意外にも屈託のない様子だったので、少し安心。 でも、一番言いたかったシンジとのことは結局言えずじまいだった。