-第四部-
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艦内に警報が鳴り響く。 何と敵エヴァンゲリオン10機以上がこちらへ向かっているらしい。 とうとう、アスカが出撃することになった。 「パイロットと弐号機、接続を開始」 「パルス及びハーモニクス正常」 「中枢神経素子に異常なし」 「発進準備完了!」 ネルフの発令所とそっくりの艦橋にオペレータ達の声が響く。 私は、ただ見守ることしかできない……。 約1時間後。 「敵エヴァンゲリオンを肉眼で確認!」 アスカの声が聞こえてきた。 「何度見ても虫酸が走るブッサイクな連中ね。あたしが引導を渡してやるわ!」
艦橋に戦闘の様子が映し出される。 戦場は、ここから数十キロ離れた珊瑚礁で、 エヴァの巨体から見れば「浅瀬」と言っていいようなところだ。 弐号機の動きは明らかに敵のそれを上回っている。 しかし、敵の量産機は数で勝る上に、前に見たときよりも性能が向上しているようだ。 「くっ、頭からっぽの量産機のクセに……ちょっとは学んでるみたいね」 モニターの一つにアスカの苦しそうな顔が映る。 「シンクロ率低下!」 「敵機影、更に3体増えました!」 苦渋に満ちたオペレータ達の声からも状況が我々に不利なことが分かる。 そして、ついに量産機の1機が弐号機を羽交い締めのようにして捕らえた。 他の量産機がわらわらとやってきて、剣とも槍ともつかない武器を構える。 「もはやこれまで、か……」 アスカの諦めの言葉が聞こえてきた。 そんな………!! アスカが絶体絶命となったそのとき、 突如として巨大な怪鳥の如き輸送機の影が私たちの艦を覆った。
私の目の前で理解を超えた光景が繰り広げられる。 何と、綾波さんの零号機とシンジの初号機が加勢に来たのだ。 3機が力を合わせて、みるみる間に敵の量産機を撃破していく。 「提督、赤木リツコ博士から通信が入っています」 「繋げ」 「博士、今降下してきた2機は一体なんだね?」 「MAGENで再生した零号機と初号機です」 「再生? そんなことが可能だとは聞いてないが」 「いいえ、理論的可能性は以前から指摘されてましたわ。 今回は、胚性幹細胞に零号機・初号機の肉片から採取した体細胞の核を移植し、 それを分化させることで、再生しました。 初号機はコアが破壊されていたために少々手間取りましたが……」 「……技術的解説は結構。それでは、敵のエヴァンゲリオンも 同じようにして再生されたものなのかね?」 「おそらく」 「分かった。協力に感謝する」 通信が終わる頃には、敵の量産機は全て殲滅されていた。 意気揚がる艦内。水兵達は飛び上がって喜んでいる。 しかし………。
「アスカ、相談があるんだ」 モニターからシンジの声が聞こえてくる。 「わたしの零号機と碇君の初号機にはN2爆雷が搭載されているわ」 今度は綾波さんの声。 「エヴァのせいで何億もの人たちが死んだ……」 「もう使徒はいないのに、いいえ、使徒がいなくなったからこそ、 人はエヴァを巡って争い続ける」 「エヴァなんてものがこの世にあってはいけないんだ!」 「そして、わたしたちチルドレンも」 「三人で自爆しよう、アスカ」 「呪われた運命を断ち切りましょう」 シンジ、綾波さん、あなたたち、なんてことを言うの………。 「なるほどね。実はあたしも思ってたんだ。 あたしさえいなくなれば戦争は終わるんじゃないの? ってね。 いいわ。あんたたちと一緒に死んであげる」 アスカ!! 「でも、その前に…………」
「マナ、聞こえる?」 「ええ、聞こえるわ。だめっ、アスカ、シンジ、綾波さん! 自爆なんて絶対だめ!!」 「いいから聞いて、マナ。……あのときはごめんなさい」 「あのとき?」 「屋上でのアレよ。あたし、どうかしてた」 「いいの。とにかく自爆なんてやめて! すぐにエヴァから降りて!」 「あなたと一緒に暮らせて楽しかった。 あたしたち本当の友達、いいえ、家族よ。ね、そうでしょ?」 「……うん……私たち………家族…………」 あとは言葉にならなかった。 「よかった。家族ができて」 「いいわよ」 「いきましょう」 「うん」 3機のエヴァが肩を組んだかと思うと、次の瞬間、正面スクリーンの映像が途絶えた。 「いやあぁぁぁぁっっ!!!!」 私は声の限りに叫んだ。