-外伝(1)-
「グーテンモルゲン、アスカ! 朝だよー!」 今日も騒々しい声で目覚めた。 「……まだ7時じゃない……もう一眠り……」 「ちゃんと起きてよ、アスカ! 遅刻しちゃうよっ!」 今、元気いっぱいにあたしの肩を揺さぶっているこの子は、 霧島マナといって、先頃からの同居人である。 なんでも毎朝0600時になると頭の中に起床ラッパが鳴り響いて、 身体がひとりでに起き出すそうな。 宵っ張りで朝寝坊のミサトは当然まだ熟睡中。保護者失格だわ。 「もう、わかったわよ。起きるから、そんなに大声出さないでよね……」 あたしは、ようやく朦朧状態でベッドの上に半身を起こした。 その後、なんとか身支度を済ませ、二人で登校。 途中で三バカやヒカリ、それにファーストらと一緒になる。 マナはちょっと目を離すと、すぐにシンジにすり寄っていくので油断も隙もない。 シンジもシンジで、鼻の下伸ばしちゃってみっともないったらありゃしない。 ま、シンジが誰と付き合おうとあたしの知ったことじゃないんだけど、 サードチルドレンとしての品位だけは保ってもらわないと、 同じチルドレンとして沽券にかかわるからね。
―――放課後。 シンジは掃除当番で遅くなるというので、先に帰ることにする。 まったく、掃除当番なんか適当にやってさっさと終わらせればいいのに要領の悪い奴。 ともあれ、マナと二人帰るのも悪くないかな。この子、結構面白いとこあるし。 帰り道、加持さんに会った。 「あっ、加持さん、み〜っけ!」 「やあ、マナちゃん、アスカ、久しぶりだな。元気にしてるか?」 「ねぇ、ねぇ、加持さん、プリクラ一緒に撮ろ♥」 マナがいきなり加持さんの腕を引っ張る。 前言撤回。やっぱり、マナとなんか帰るんじゃなかった。 シンジのみならず、あろうことか加持さんにまで粉をかけるとは! 現時刻より霧島マナを敵と認識する。 「おいおい、まいったな。この歳でプリクラかよ」 そう言いながらも、大人しくプリクラコーナーに引っ張って行かれる加持さん。 情けない。ちょっとは抵抗してよね。 「次はあたしねっ!」 撮り終えたマナを押しのけ、仇の如くこれでもかと加持さんにしがみつく。 「じゃ、三人で撮ろうか?」 と、マナ。 「いいから、アンタはあっち行ってなさい。ね〜、加持さん♥」 「どうでもいいが、さっさと済ませてくれ」 (「"He, denken sie mehr an Ihre Weise des Sprechens."(ちょっとぉ、なんて言い草よ)」) 悔しいので、フレームを換えては撮りまくってやった。
―――加持さんと別れた後。 「わ〜い、コンプリート♪」 マナは、今撮ったプリクラを嬉々として手帳に貼り付けている。 「コンプリートって何をよ?」 「だからね、プリクラ。ほらっ」 そう言って見せてくれた手帳には、夥しいプリクラが貼られていた。 まるでプリクラの畑だ。 「まず、青葉さんでしょ。それから、日向さん。 加持さんに、シンジ。ついでに、鈴原君と相田君。 で、シンジのお父さんでしょ……、あと、よく知らないお爺さん」 って……、冬月副司令まで………。 「あんた、知ってるネルフ関係者の男の人全部とプリクラ撮ったの?」 「そうだよ♪」 …………恐ろしい子!