霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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-第五部-
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危月機日その1

    昨日まで三日間降り続いた雨もやんで、青空が広がっている。

    今日は久しぶりにシンジとデート♪
    行き先は定番の箱根園だ。
    朝から何着ていこうか迷いに迷って、結局、ノースリーブのブラウスに
    オレンジ地に黄色のチェックのミニスカートといういつもの恰好に落ち着いた。

  「わぁ、キレイ………」
    巨大な水槽の中を色とりどりの魚たちが泳ぎ回っている。
    箱根園水族館はバスで僅か20分足らずのところにある。
    私は到着するなり強引にシンジと腕を組んで、水族館中を見て回った。
    淡水から海水、餌付けショーにアシカショー、イルカショーまでフルコースで。

    お次はロープウェー。
    普通に登ったら何時間もかかる駒ヶ岳山頂までたった七分で到着。
    展望台からは、芦ノ湖が一望できるのはもちろんのこと、北は遠く富士山まで見ることが出来る。
  「ステキね………」
    欄干から身を乗り出すようにして、青く霞む山々を眺める。

  「そういえば」
    シンジが感慨深げに言った。
  「初めて会ったときも学校の屋上から二人で山を眺めたね」
    ………覚えていてくれたんだね、シンジ。

  「うん」
    私は嬉しくて、シンジにもたれかかった。

    すっかり箱根園を堪能して、さあ帰ろうかという時、またもや雨が降り出した。
    しかも、かなりのどしゃ降り………。
    むぅー、せっかくのデートなのに。でも、行きじゃなくて帰りでまだ良かった。

    傘なんか持ってきてないので、バス停まで走る間にすっかりびしょ濡れ。とほほ……。
    もしかして下着透けてるかな? まぁ、いいや。

    バスは夕闇迫る県道75号線を一駅ごとに停車しながら第三新東京市へと向かう。
    雨粒が、人いきれでうっすらと曇った嵌め殺しの窓に激しく打ちつける。

  「困ったな。雨、止みそうもないね」
    シンジが外を見ながら言った。
  「うん……」
  「このぶんじゃ、第三に着いてもしばらくバス停で雨宿りだね」
    それも悪くないな、と思いながら私もふと車窓から外を眺めると、
    駒ヶ岳山頂付近でチカッと何かが光るのが見えた。
    その光は、さらに続けて何度も明滅する。

  『……ヲ・ヘ・イ・サ・セ・ヨ……』

    あれは間違いなく発光信号だ。

  「ん、何? マナ、どうかしたの?」
  「うん。あのね、さっき私たちが居た駒ヶ岳の山頂から、誰かが発光信号を送ってるの」
  「発光信号?」
  「そう。私、戦自で教わったから分かるの」
  「その信号、なんて言ってるの?」
  「何かを閉鎖せよって。でも、その何かが分からない……」
  「うーん、何だろう。水門かな?
   って、そんなわけないか。ここ二、三日みたいな大雨の時は逆に開けるんだよね」

    水門!!

    私は急に胸騒ぎがした。
    大雨の時に水門を閉じるのは普通のことだ。だが、シンジの言うとおり、
    芦ノ湖沿岸の洪水を防ぐために開放することもある。
    いずれにしろ、山の上から発光信号などで指示するのは奇妙ではないか。

  「シンジ、私、降りるね」
    私は、ちょうど停留所で停車したバスから飛び降りた。
  「待ってよ! どうしたの? マナ?」
    シンジもバスから降りてくる。
  「私、水門を見てくるから、シンジは先に帰ってて」
  「そんな、僕だけ帰るわけにはいかないよ。一緒に行こう」
  「心配しないで。ちょっと見てくるだけだから。
   それじゃ、シンジはここで待ってて」

    シンジはしばらくの間じっと私の目を見つめて、最後に、
  「……分かった。気をつけて」
    と、言った。

written by Adrienne ◆HI8ebVe8lo

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