-第五部-
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湖尻水門は目と鼻の先だ。 雨の中、濡れるのもかまわずひたすら走る。 約五分後、ようやく辿り着いた水門はやはり閉まっていた。 おかしい。先日来雨が降り続いていて芦ノ湖の水位は目一杯上がっている。 水門は開放しなければならないはずなのに。 しかも、水門監視所に明かりがついていない。 遠隔操作が可能とはいえ、これほど増水している時に無人というのは変だ。 私は嫌な予感を振り払えずに監視所の窓の中をそっと覗いた。 そこには、手足を縛られ猿ぐつわをされた男の人が! 間違いない。これはテロだ。 見たところテロリスト達は三人組。 一人は監視所の中。残る二人は水門の上を行ったり来たりしている。 どうしよう。生憎、今日は薄着をしてきたので、携帯を持っていない。 いったんバス停に戻って、シンジに警察へ通報してもらうか…… そう考えを巡らしていると、またもや駒ヶ岳山頂で光が明滅するのが見えた。 『バ・ク・ハ、ジ・ユ・ン・ビ』
爆破準備!! テロリスト達は水門を爆破して芦ノ湖を決壊させるつもりだ。 そうなると山地を削って作られた第三新東京市にどれほどの被害が生じるのか想像もつかない。 もはや一刻の猶予もない。 私は監視所(ドアは施錠されていなかった)の中に飛び込んだ。 「何だ!?」 テロリストはやや裏返った声でそう叫ぶと私に拳銃を向けた。 が、彼は、私の姿を見て一瞬躊躇した後、銃口を逸らせた。 そう、私が一見か弱い少女に過ぎないので、銃を向けるまでもないと思ったに違いない。 チャンス! 素早く飛びかかり、拳銃をたたき落とすと返す刀で男のみぞおちに肘鉄を喰らわせる。 戦自時代、諜報員となるために受けたCQB(※)の訓練が役に立った。 「ぐっ……」 男が怯んだ隙に床に落ちた拳銃を拾う。 ………この銃は、P220……、いや、P226? 男は苦しそうにみぞおちを押さえ、作り笑いを浮かべながら、 「君、そんなものを触っちゃ危ないよ……。さぁ、こっちにそれを渡しなさい」 と言った。 「動かないで!」 男から奪った拳銃の遊底を引き、両手で構える。 ※ Close Quarters Battle:閉所戦闘
596 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2006/12/06(水) 01:39:57 ID:??? 近接戦闘では? 597 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2006/12/06(水) 21:24:45 ID:??? >>596 http://ja.wikipedia.org/wiki/CQB CQB(クロース・クォーター・バトル、閉所戦闘・近接戦闘、英:Close Quarters Battle)は、 屋内など閉所における極めて近接な距離での戦闘を意味している。距離によっては銃が使えず徒手格闘になる。