-第五部-
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おかしなことになった。 水門での一件の事情聴取を受けるため警察署に同行するはずだったのが、 なぜか、陸上自衛隊の松本駐屯地に連れてこられてしまった。 なぜ警察ではなく自衛隊なのか、そしていつ帰してもらえるのか、 何度も説明を求めたが、「防衛上の理由」などといって何も教えてもらえない。 「明日から警務官(※)による取り調べがあります。 今日のところはこの部屋で休んでください」 そう言って通された部屋は、どうやら士官用の個室のようだった。 要するに、私はこの部屋に軟禁されてしまったわけだ。 理不尽な取り扱いに怒りというよりは不安がこみ上げてくる。 まぁ、部屋そのものはそこそこ快適そうなので、その点だけは少し安心したけど……。 テレビがあるのでつけてみる。 『この時間は予定を変更して報道特別番組をお送りしています』 アナウンサーの緊張した声が耳に飛び込んできた。 『全国同時多発テロにより炉心融解を起こした原子炉は次の通りです…… ○○県第×号原発、同△号原発、□□県▽発電所……』 『政府は非常事態宣言を発令しました。住民の皆様は外出を控え…………』 芦ノ湖だけじゃなかった! テロは全国で同時に起こっていたんだわ! ※ 旧軍及び諸外国軍における憲兵のことを自衛隊では警務官と称する