-外伝(2)-
ようやく今日この日を迎えた。よーし、頑張るぞっ! 余談だが、ミサトさんはチョコよりもっといい物をあげたほうが喜ばれると言っていた。 はて、いい物ってなんだろう。よく分からないので無難にチョコにしておこう。 朝、登校時にいつものようにシンジに会った。 ラッキーなことに、鈴原君たちは今日は一緒ではないようだ。 「はい、シンジ。手作りだよ♪」 早速チョコを渡す。ちょっとドキドキ。 「あ、ありがとう………」 シンジは少し赤くなりながらも、とにかく喜んでくれた。えへへ、嬉しいな♪ 当然アスカも一緒に渡すものと思っていたのだけれど、 予想に反して彼女は私たちを尻目にツカツカと先に行ってしまった。 ―――放課後。 これまでにクラスの女子(私を除いて)3人、 そしてなんと綾波さんまでがシンジにチョコを渡していた。 ずっとシンジを監視していた私が言うのだから間違いない。 果報者だね、シンジ……。 でも、シンジの場合、「僕にはこんなにチョコをもらう資格なんてないんだ」 とか言って逆に鬱になったりして……。ま、そこがカッコイイんだけど♥ ところで、アスカだけはまだ渡していないみたい。 昨日一緒に作ったチョコ、どうするんだろう。 しばし思案してハタと気がついた。 私みたいなタイプは性格的に簡単に渡せるけど、アスカはそうではないのだ。
「マナ、よかったら一緒に帰ろうか」 せっかくシンジがそう言ってくれたのに、私は思わず、 「ごめん、私、ちょっと用事があるから、アスカ達と先に帰ってて」 と答えてしまった。 はぁ…………。 溜息をつきつつ、一人トボトボと回り道をしながら家路につく。 私、なにやってんだろ………。 でも、まぁ、あのプライドの高いアスカが好きな男の子にチョコを渡すんだもん。 その勇気に免じて一回くらいチャンスをあげてもいいよね。 しょんぼりしながら歩いていると、日向さんに会った。 「あ、日向さん。これ、どうぞ」 練習チョコ(本命チョコと同時に作った失敗作)の一つを渡す。 「わぁ、ありがとう、マナちゃん」 「どういたしまして」 日向さんと別れてしばらく行くと、今度はネルフの副司令だったとかいう例のおじいさんに。 「あ、これ、どうぞ」 「ほう、すまんな、霧島君」 「どういたしまして」 ……… …… … こうして私のバレンタインデーは、 彼女居ないオジさん(や、おじいさん)の救済に費やされていった。 はぁ…………。 はてさて、アスカはちゃんとシンジにチョコ渡せたのかな……。