-外伝(2)-
放課後。シンジと私とアスカ、綾波さん、 それに珍しく渚君も一緒に公園へ行った。目当ては屋台のクレープ屋さん♪ クレープはすぐに買えたけど、 あいにく、オープンカフェ風のテーブルはほぼ満席みたい。 どこかに空いてる席はないかな? と、キョロキョロしていると、 リツコさんとマヤさんがいるのを発見! 「こんにちは」 「あら、マナちゃん。それに、貴方たちも」 リツコさんはなぜかちょっぴり気まずそうな顔をした。 「お二人はよくここにいらっしゃるんですか?」 「よく、ってほどでもないわね。ま、たまにってところね。 貴方たちこそお揃いで珍しいじゃない。特に渚君」 渚君は何も答えず、例によって怪しい笑みを浮かべたまま。 「……妙だな。リリンの女の人は………の筈……」 なにやら意味不明なことを呟いている。ほんと、この人って変わってるよね。 私たちは、とりあえず相席させてもらうことにした。
「珍しいと言えば、」 なんとなく澱んだ場の雰囲気をどうにかしようと、シンジが話題を切り出した。 「エヴァの起動確率って、オー・ナイン、0.000000001% なんですよね? それだけ珍しいパイロットが今ここに4人揃ってクレープ食べてると思うと なんだか不思議な感じがします」 「……偶然揃ったわけではないわ……わたしたちがここにいるのは必然……」 意味深なことを言う綾波さん。 「10億人に1人。それだけアタシ達が特別な存在ってことね」 アスカが胸を張る。 チルドレンではない私はちょっぴり疎外感………。 シンジは鋭くそれを感じ取ったらしく、 「ってことは、適当に10億人選んで片っ端からエヴァに乗せていけば 誰か1人は適格者が居るってことですよね?」 と言った。 「それは違うわ」 リツコさんの目がキラリと光る。 「10億回試行して、10億回とも起動できない確率は……」 「約 0.367879 ですね」 マヤさんが引き取って即答した。 「えっ、何でそんなにすぐ分かるんですか?」 「それはね……」 今度はマヤさんの目がキラリと。 「一回の試行で事象 A が起きる確率が p のとき 1/p 回試行して 一度も A が起きない確率 y は (1-p)^(1/p) なの。 この値は p が小さくなるほど e^-1 に近似するから、計算しなくても分かるのよ。 あ、もちろん e は自然対数の底ね♪」 ……………。さすが、理系。
「その通り。証明してあげるわ」 マヤさんの説明に満足そうに頷いたリツコさんは、 胸ポケットからボールペンを取り出すとサラサラとペーパーナプキンに書いていく。 lim((1-p)^(1/p)) ここで、p = -t とすると、 p→0 = lim((1+t)^(-1/t)) t→0 = lim((1+t)^(1/t))^-1 t→0 lim((1+t)^(1/t)) = e の定義により t→0 = e^-1 「ね、面白いでしょ。p が十分に小さいと、e の逆数とほぼ……」 さらにレクチャーを続けそうな気配のリツコさんだったが、 ふわわぁ〜っと大あくびをしている綾波さんに気付いて、 軽く溜息をつきながらペーパーナプキンを丸めた。 「ごめんなさい。こんな話、退屈だったかしら?」 ……… …… … ふぅ。リツコさんとマヤさんって、色んな意味でアヤしい。