霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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○月4日

     一気にやる気がなくなった今日この頃。
     ネルフ本部の中を私はぼんやりと歩いていた。
     そう言えば、予定通りならこの後シンジは葛城一尉と一緒に暮らすことになるのね。
     ふっ、
     と、私は小さく溜め息を吐いた。
     どうでもいいや。本当に。
     もう私のシンジはここにいないんだし。
     あー、でも、今回シンジはエヴァに乗ってまだ戦っていないのよね。
     と思ったけど、ホント今さらどうでもよくなっていた。
     私は通路の窓から見えるジオフロントの景色をぼんやりと眺めながら、
    「戦自に帰りたいな」
     と呟いていた。
     御殿場の駐屯基地に行けば、またムサシやケイタに会えるし。そうすればまた昔みたいに
    つらいけど楽しい日々に戻れるかも。
     と思ったけど、次の瞬間、私は気がついた。
     この世界のムサシやケイタも私を知らないんだよねと。
     そもそも今回は戦自に所属していないから戻れないし。
     ふうっ、と私はまた溜め息を一つ吐いた。
     もうここには私の知っている人は誰もいないんだ。
     そう思うと寂しさが胸にこみ上げてきた。
     少し涙がこぼれそうになったけど、私はそれをこらえて再び歩き始めた。
     既に目的を失ってしまった私。
     この世界に希望は何もないけど、とりあえず生きていかなくてはならない。
     ともかく与えられた任務を遂行しよう。 そう私は心に決めた。
     しばらくして、総務部の前につくとオフィスの中から大声が聞こえてきた。
    「なんですってー!」
     葛城一尉のあまりにも大きな声に誘われて、私はドアを開けて中に入っていった。
    「なんでシンジ君が一人暮らしなのよ? 親子なんだから司令と一緒に暮らすのが筋ってもんでしょ」
    「ですから、その司令からの通達なんですよ」
    「だからって、中学生に一人暮らしなんてさせられる?」

     その時、シンジが小さな声で葛城一尉に声をかけた。
    「別にいいです。ひとりの方が気が楽ですし。……父さんだって僕なんかいない方が」
    「もう無理しちゃってー。親子なんだから一緒に住む方が自然じゃないの。我慢しないで
    言いたいことがあったら素直に言った方が」
    「ほっといてください。ミサトさんには関係ないでしょ」
    「なによ!その言いぐさは。私はねー、あなたのことを心配して」
    「よけいな心配なんてしなくていいです」
     なんだか、シンジとミサトさんがケンカを始めちゃって、私はそれを止めようと、
    「あのー、葛城一尉」
    「なに? マナちゃん?」
     と、息を切れさせて葛城さんが訊いてきた。もう興奮しているのがありありとわかる。
    「シンジ君がひとり暮らしをしてもいいんじゃないんですか。本人もそう希望しているんだし」
    「だけど、中学生がひとり暮らしなんて、そんなの危ないでしょ?」
    「そうでしょうか。私もひとり暮らしをしていますし、綾波さんもそうですよ」
    「でも、……」
    「大丈夫だよね、シンジ君」
    「う、うん。前のところもひとり暮らしだったようなものだし」
     私は総務課の人のところへ行き、
    「シンジ君の住所って、どこなんですかぁ?」
    「ああ、それならここだよ」
     と言って、知らされた住所は、
    「あー、私の隣部屋だ。そっかあ、じゃあ、これからお隣さんだね」
    「えっ、そうなの?」
     いつかのように私はくるっと一回転して、スカートの裾をなびかせてから、
    「私、フォースチルドレン霧島マナ。これからよろしくね。碇シンジ君」
    「よろしく。霧島さん」
     そう挨拶し合わなくてはならないことに私の胸はまたギュッと苦しくなった。

     その後、綾波さんも交えて、シンジの部屋で引越祝いをすることになった。
     前の時も綾波さんとはほとんど話したことはなかったけど、今回もそれはあまり変わりなかった。
     綾波さんはちょっと苦手な感じ。
     今日もシンジの引越祝いに誘った時、『いい、』って速攻で断ったし。
     でも、私が強引に綾波さんを引っ張ってきたんだけどね。
     そんなこんなでシンジの部屋に着き、途中のスーパーで買ってきた食べ物をテーブルに
    パーッと広げた。お寿司に鳥モモにトマトサラダにケーキにヨウカンに焼きプリンに……
     ホント、今の私には美味しいものを食べることだけが生き甲斐よねえ。
     前の時なんか戦自にいたから毎日カレーとかそんなんばっかりだったし、ケーキなんてクリスマ
    スにしか食べれないなんて信じられる?
     と、そんな時、シンジが声をかけてきた。
    「どうしたの? 霧島さん?」
    「あっ、何でもない。さあ、食べよっ」
     危ない。思いに没頭してしまった。
     私は笑顔を無理に作ってから、料理を皿に盛りつけ始めた。
     それから、ジュースで乾杯してから私たちはごちそうを食べ始めた。
     そう言えば、こっちに来てから綾波さんと初めてご飯を一緒にとってる。
     私が綾波さんをジッと見つめていたら、
    「なに?」
    「あの、訊いていい? 綾波さんって魚が嫌いなの?」
     綾波さんはお寿司を食べているんだけど、玉子焼きとかカッパ巻きとかカンピョウ巻とかそんなの
    ばっかり口にしていた、
    「生魚は嫌い」
    「そう、そうなんだ。他に嫌いなものはあるの?」
    「肉、」
    「へっ、へー、そうなんだ」
     生寿司もお肉も美味しいのにと、私はケン○ッキーフライドチキンをパクッと食べながら思った。
     その後、今さらだけどもう一度自己紹介をしてから、
    「僕もエヴァに乗って、あの怪獣と戦うのか」
     とシンジが不安そうに言った。

     その時、綾波さんが静かに声を出した。
    「心配はいらないわ。エヴァがあなたを守ってくれるもの」
    「……エヴァが?」
    「そう。あなたの乗る初号機があなたを守ってくれるわ」
    「エヴァが僕を守る……。リツコさんが言ってた。エヴァはロボットでなく人造人間だって。
    それが関係しているのかな?」
    「知らない。でも、あなたもエヴァとシンクロすれば、その意味がわかると思う」
    「できるかな? 僕に」
    「大丈夫だと思う」
    「ふ〜ん。あっ、そうだ。霧島さん?」
     と、突然、声をかけられて、口いっぱいにチョコレートケーキを頬張っていた私は
    思わずゴックンとそれを飲み込んでしまった。
     い、息が苦しい。
     慌ててオレンジジュースを飲み干してから、私は口の周りにチョコレートいっぱいつけたまま
    「な、なに?」
    「大丈夫?」
    「うん、大丈夫だから、何?」
    「霧島さんもチルドレンなんだよね?」
    「そうよ。私はフォースチルドレン。四番目のチルドレンってことね」
    「あのケージってところにエヴァは2つしかなかったけど、霧島さんの乗るエヴァはどこにあるの?」
    「そー、それね。私のエヴァはね、あめりかにあるのよ」
    「アメリカ?」
    「そっ、あめりか。まだ建造中で、先にチルドレンに選出されちゃったから、この本部で訓練だけし
    ているのよ。だから、私もまだダミープラグに乗ったことしかないんだ」
    「そうなんだ」
     シンジは少し思いこむように俯いてから、
    「でも、よかった。霧島さんや綾波さんがいて。もしも僕だけだったら、ここでやっていけないと思う。
    改めて、霧島さん、綾波さん、これからよろしく」
    「シンジ君、よろしくね」
     と、私はシンジの右手を両手で包んで握手した。

     シンジは照るように頬を赤くしたけど、
    「綾波さんもこれからよろしく」
     と言って、私にされたように綾波さんに握手をした。
    「……よろしく」
     綾波さんはそう小さく言って、繋がれた手を少しの間見つめていた。
     それからまた私たちはおしゃべり〜ほとんど私とシンジがだけど〜して、デザートを
    食べてから、夜も更けてきたということでお開きとなった。
     玄関を出て私たちを見送るシンジが、
    「今日は本当にありがとう。こんなに楽しかったのは久しぶりだよ」
     と、すごく恥ずかしそうに言った。
    「私も楽しかったよ。それとシンジ君。霧島さんって言うの止めてほしいんだ。これからは
    マナでいいから。ねっ?」
    「私も”綾波”でいい」
    「えっ、ちょっと恥ずかしいな」
    「えー、マナって呼んでくれないの?」
    「……わかった。がんばってみる」
    「じゃあ、シンジ君。また、明日ね」
    「マナ、綾波、また明日」
     そして、私たちとシンジは別れた。私の部屋の前で、
    「綾波さん。今日は来てくれて、ありがとう。本当のことを言うと、ちょっと不安だったの。綾波さん、
    迷惑じゃなかったのかなって」
    「別にかまわないわ」
    「うん、ありがとう。じゃあ、また明日ね。綾波さん」
    「……また、」
     そう小さく言うと、綾波さんは足音を立てずに歩き去っていった。


    ○月4日
    〜中略
     ファーストとサードに友好的関係の発展は見込み無し。
     また、ファーストについて特に内面的変化は感じられず。
    以上