霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

鋼鉄のガールフレンド攻略 | 碇シンジ育成計画攻略 | サイトマップ

-plot239-

○月18日

     気温36度。
     ここは箱根の山の中なのに暑すぎます。
     教室にもクーラーを入れてくれないと死んじゃうよ。現にクラスの半分以上の人が机の上で
    倒れそうになっているし。
     先生が言っている英語の言葉も今はただ雑音にしか聞こえない。そもそも私はどうも英語が
    苦手なのよね。文字で書くとひらがなになっちゃうような。です、いず、あ、ぺん?
     う〜ん、もうダメ。
     そんな天然サウナのような授業が終わり、私が鞄の中へ教科書とかを片づけていると、
    「マナぁ、帰るのぉ?」
     と声をかけられた。
     私がその声の方へ振り向くと、そこにはヒカリちゃんがいて、
    「そうだよ。今日はネルフで訓練もないし、真っ直ぐ帰るつもり」
    「あ、そうなんだ」
     と言って、ヒカリちゃんは少し考えるような仕草をした。
     おさげとソバカスがチャーミングなヒカリちゃんは私の唯一の友達。前の時は全然話したことは
    無かったし、印象もほとんど残ってない。でも、だからこそ友達になれたのかも。
    「じゃあ、マックに行かない? 新メニューにフルーリーってデザートができたんだって」
    「マクド? 行く行く。でぇ、そのふるーりーってどういうのなの?」
    「ん〜、一言で言えば、ソフトクリーム?」
    「え〜、それだけぇ?」
    「私もよくわかんないんだけどね、てへっ」
     と、バカなことを言い合いながら私たちは学校の門を出た。
    「それで、聞いてよ。あの鈴原が今日も碇君に宿題を見せてもらってたのよ」
    「今日も?」
    「そう。ここんとこ毎日。ホント、碇君も人がいいんだから」
     前の時と同じようにここでのシンジも鈴原君や相田君と仲がよくなっていた。
     今ではヒカリちゃんに3バカと呼ばれているし。
     でも、人間関係とかけっこう前と同じようになっているなと思った。違うところは私自身くらいか。
    以前と比べて人との繋がりが少なくなっている。あ、でも、ヒカリちゃんや綾波さんとはよくなったかな。
    「マナ、聞いてる?」

     と、思いに沈んでいた私へヒカリちゃんは声をかけた。
    「うん。聞いてるよ」
    「だから、もっと鈴原は自分で勉強しなくちゃならないのよ」
     そう力説するヒカリちゃんはまじめな優等生。クラスの委員長もしている。
    「宿題も見せてもらってちゃ自分のためにならないのに。そう思うでしょ?」
    「そうかも」
     時たまヒカリちゃんに宿題を見せてもらう私の返事は歯切れが悪い。
    「だから、たとえば自分でやってわからないところがあれば訊きに来ればいいのに」
    「そうかもしれないね。鈴原君もシンジ君と一緒に宿題をすればいいのにね」
    「えっ、あ、そうね」
     と、ヒカリちゃんはちょっと驚いたように言った。
     どうしたんだろう? 慌てて。
     んー、そう言えば、ヒカリちゃんとの話に鈴原君のことがよく出てくるような。
     えっ、
     まさか、
     そうなの?
     私はヒカリちゃんの横顔をジッと見つめて、にやぁっとしてしまった。
     そんな私に気がついたのか、
    「なに? 私の顔に何かついてる?」
    「ううん、別に」
     まあ、いいわ。
     このことは秘密にしとく。友達だしね。
     でも、ヒカリちゃんの趣味もあまりよくないなぁ。
     まあ、私もひとのことは言えないか。
     と、前のシンジを思い出して、ちょっとしんみりとしちゃっていた時、
    ”♪♪〜♪〜♪”
     とケータイの呼び出し音が鳴った。
     この音はと、私はネルフ支給とは別のもう一つのケータイを鞄の中から取りだした。
    「ヒカリちゃん、ごめん。先に行っててくれる? すぐに行くから」
    「うん。じゃあ、待ってるね」

     ヒカリちゃんが離れたのを見てから、私はケータイに出た。
    「はい、霧島です」
    『やぁ、元気かい? マナちゃん。もうボーイフレンドもできたかな?』
    「仕事の話じゃないんですか、加持さん? そんなおしゃべりのために暗号回線まで使って」
    『まあ、そういうなよ。こういう日常を知っておくのも上司の仕事さ。ところで、サードチルドレン
    碇シンジ君はどうだった?』
    「どうって……」
    『ふふっ、彼に会えるのを楽しみにしていたじゃないか。彼の写真を見る君の瞳はまるでアイド
    ルでも見つめているようだったぞ』
    「もう、そんなこと言って。セクハラで訴えますよ」
    『ははっ、悪い。でも、その様子じゃ期待はずれだったってところかな』
    「そんなわけじゃあ……」
    『まあ、でも、悪い子じゃないだろ。君とは同じチルドレンなんだ。仲良くしてやってくれ。それに、
    それが君の任務の一つでもあるんだからな』
    「そんなこと、わかってます。でも、友達になったとして、私はどうすればいいんですか? 最後
    はどうせ裏切ることになるんでしょ?」
    『裏切るか……。ま、今はそんなことを考えなくてもいいさ。一度っきりの中学時代。今はただ
    悔いの無いように生きていればいい。それはそれとして、何か困ったことはないか? 上司として
    できるだけのことはするが』
     少しの間、私は考え込んでから、
    「あのー、毎日の報告書、あれ、毎日なんて書くこと無いんですけど。最近、ちょっと困っちゃって」
    『あー、あれか。まあ、そうだな。自分の日記として書いていればいい。今日、何があったとか、マナ
    ちゃんはどういうことを思ったとか、そんな些細なことでいいんだ』
    「……エッチ。女の子の日記を見るなんて、最低です」
    『ははっ、こりゃあ、マナちゃんに一本取られたな。でも、まあ、そんな感じで頼むよ。それにマナちゃ
    んはまだ中学生なんだ。そんなに難しい要求はこちらもしないさ』
     と言って、加持さんは電話を切った。
     日記かぁ。って、これ、加持さんとの交換日記になるのかな。と、そんなことを私は思った。


    ○月18日
    〜中略
     やっぱり、マクドのデザートはシェイクのバニラが一番です。