霧島マナの日記 鋼鉄のガールフレンド

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×月31日

     分裂した使徒と戦った翌日、訓練はお休みだった。
     昨日はいろいろ大変だったし、そこらへんは葛城さんも考慮してくれたみたい。
     とは言え、私は戦わないで、本部でお留守番だった。
     実戦に出たのは、レイちゃん、シンジ君、アスカさんの3人で、使徒が分裂しちゃって、
    やられそうになったけど、そこをN2爆雷で攻撃。動けなくなった使徒を3機のエヴァで
    やっつけるという終わってみれば楽勝な戦いだった。
     エヴァだけでやっつけられなかったことがアスカさんには不満だったようだけど、私は
    無事に戦いが済むのが一番だから、よかったと思っている。
     そんなわけで、今日は土曜日。
     私は一日中、思いっきり部屋の中でゴロゴロするんだと決めていたんだけど、なんだか
    隣の部屋がバタバタとうるさくて、どうにもこうにも眠っていられなかった。
     いったい何なんだろうと思って、10時くらいにふとんから出て、玄関の外を見てみたら、
    「やあ、マナ君。おはよう」
     と、加持さんが大きい段ボールを両手に抱えながら言った。
    「えっ、どうしてここに?」
    「いやあ、ちょっと引っ越し手伝いを頼まれてな」
    「そういうことよ。今度、アタシ、ここに越してくることになったから」
     と、その時、アスカさんが大きなバックを持って現れた。
    「えっ、隣に?」
    「まあね。いつまでもホテル暮らしもしてらんないし、総務の方に部屋を探してもらったら
    ここになったというわけよ」
    「そうなんだ。……あっ、私も手伝うよ」
    「悪いわね。じゃあ、あっちのトラックに荷物があるから、それ、お願いするわ」
    「うん、わかった」
     と、そんな感じで引っ越し作業が30分ほどで終わり、
    「ま、あとはアスカが自分でやるしかないな」
     と、加持さんが部屋の中を見回しながら言った。
     一応、家具類はセットし終わり、段ボールの荷物も運び終わった。
     あとはもうアスカさんが自分でするしかないと思う。

     そんなわけで、加持さんはアスカさんの部屋から出ると、
    「じゃあ、俺は用事があるから行くよ」
    「あ、加持さん。今日はどうもありがとうございます」
    「力仕事ならいつでも呼んでくれ。ま、こんなことしか役に立てないがな」
    「いいえ、そんな」
    「じゃあ、アスカ。これからお隣さんになるマナ君やシンジ君と仲良くするんだぞ。
    マナ君もアスカのこと、よろしく頼む」
    「はい、」
    「じゃ、またな」
     と言って、加持さんは帰っていった。
     その後、自分の部屋に戻った私は夕方までごろごろと漫画を見たり、テレビを見たり、
    ポテトチップスを食べてたりとすっかり食っちゃ寝をしていたんだけど、

    ピンポ〜ン

     と玄関のチャイムが鳴った。
     そして、ドアを開けると、そこにはアスカさんが立っていて、
    「夕ごはん食べた?」
     と訊いてきた。
    「ううん、まだだけど」
    「よかった。ほら、そばを持ってきたから、一緒に食べようと思って」
     と、アスカさんは両手に抱えたざる蕎麦の器へ視線を向けた。
    「えっ、私に?」
    「ん? 日本じゃ、引っ越ししたら近所の人とそばを食べるって聞いたけど」
    「……誰に?」
    「加持さんに」
    「うーん、よく漫画とかでは見るけれど、本当にそんなことする人じは見たこと無いけど」
    「えっ、じゃあ、これってウソなの?」
    「うそじゃないけど、失われた日本の風習みたいな。でも、そんなこと、どうでもいいよ。
    アスカさん、ありがとう。一緒に食べよう」

     と言うと、アスカさんはちょっと恥ずかしそうに、
    「仕方ないわね。じゃあ、今日だけよ」
     と呟くように言った。
     それから私は部屋の中をパパッと片づけて、アスカさんを招いた。
    「へー、けっこうキレイにしているじゃない」
    「そう?」
     と私は言うけど、さっきの数分でタンスに散らかった物を押し込んだのは秘密。
     リビングにアスカさんと腰を下ろし、テーブルの上に置いたざる蕎麦を見た。
    「これ、3人前だよね」
    「そうよ。アタシと、アンタと、シンジの分。アイツもこの隣に住んでいるんでしょ?」
    「うん、」
    「で、さあ、アイツの部屋にも行ってみたけど、どうも留守みたいなのよね」
    「いなかったんだ?」
    「というわけだから、これ、アンタとアタシで食べるしかないわね」
    「んー、ちょっと待って」
     と、私はケ−タイを取りだして、電話をかけた。
    「あ、シンジ君? 今どこ? うん、そう、あ、レイちゃんもいるんだ?」
     と話が続き、
    「じゃあ、お願いね」
     と、電話が終わった。
    「シンジのとこに電話したんだ?
     とアスカさんが訊いてきた。
    「うん。シンジ君、ネルフ本部に用事があって行ってたんだって。でね、レイちゃんも
    ちょうどいたから、今から買い出しして、ここに来るって」
    「買い出し?」
    「うん。みんなでアスカさんの引越祝いをしないとね」
     と言って、私はにこっと笑った。
    「い、いいわよ。そんなの」
    「だーめ。郷には入れば郷に従えよ」
     と、私たちはシンジ君とレイちゃんが戻るまで待つことになった。

     で、シンジ君たちが来るまで、私たちは部屋で二人っきりだった。
     私は前の時にアスカさんを知っているけど、こっちのアスカさんは私とまだそれほど面
    識がないから、ちょっと居心地が悪いみたいな感じで、少し気まずい空気が流れている。
     私は場を持たすためにコーヒーを入れて、
    「どうぞ」
     と、アスカさんの前にカップを置いた。
    「ん、ありがと」
     と言って、アスカさんはコーヒーを飲んだ。
     それからちょっと二人でテレビを見ていたら、アスカさんが唐突に、
    「フォース? って、ちょっと呼びにくいわね」
    「マナでいいよ」
    「じゃあ、マナ。アンタ、シンジと同棲しているってわけでもなかったのね」
    「ぶっ!!」
     と、私は飲んでいたコーヒーを噴き出してしまった。
    「な、なにを言うのよ?」
    「だって、シンジと住所が同じじゃない。すっかり同棲してんのかと思ったわよ」
    「同じって、部屋番号が違うでしょ」
    「隣同士だもん。同じようなものよ」
    「違う!」
    「まあ、それはいいとして、同棲はしてなかったのね」
    「当たり前でしょ。私とシンジ君はそんなんじゃないし、第一まだ中学生じゃない」
    「中学生って言ったら、もうじゅうぶん大人よ」
     と、アスカさんは小さく溜め息を吐いた。
    「ねえ、マナ?」
    「なに?」
    「加持さんにとって、アタシってやっぱり子供なのかな?」
     と、アスカさんが訊いてきた。
     これまで加持さんへアスカさんがもうアプローチをかけているのを何度も見ている。
     それに前の時にシンジからアスカさんが加持さんのことを好きだと聞いていたし。

     でも、私が感じていたところではどう見てもアスカさんはシンジのことが好きな
    ように見えた。私とシンジの仲をいつも邪魔していたし。
     あっ、でも、今度はアスカさんと仲良くなりたいなと思っている。
     今度もアスカさんはシンジ君のことが好きになるかどうかわからないけど、私はたぶ
    んそうならないし、そうなれば普通の友達になれるかもしれない。
     本当は前の時、アスカさんと友達になりたかったんだ。
     と、少し物思いに耽ってから私は、
    「んー、どうかな。でも、加持さんって今31歳でしょ? そうすると加持さんから見れば、
    14歳の女の子なんて自分の娘のように見えるのかもしれないかな」
    「17歳差か。普通に考えれば、恋人の対象にはならないのかな」
    「どうだろ。でも、よくニュースで中学教師が生徒に手を出して、淫行で逮捕されているの
    を聞くし、ロリコン趣味の人ならOKかも?」
    「ロ、ロリコン、加持さんがロリコン? マナ、なにげなくアタシに大ダメージを与えてくれるわね」
    「てへっ、そうかな」
    「そうかなじゃないわよ」
     と言って、アスカさんは頬杖をついた。
    「まあ、アタシもここんとこ冷静に考えてみたのよ。やっぱ、加持さんにとって中学生なんか
    恋愛対象になるわけ無いのよね。空母で航海中に裸でせまったりしたけど、そりゃあ、相手
    にされるわけないわよねえ。あはは、は、……」
     と、アスカさんは自嘲気味に笑った。
     私はと言うと、アスカさんってすっごくダイタン、とビックリしていた。
     と、その時、
    「決めたっ!」
     と、アスカさんが拳を握りしめて大声で言った。
    「えっ、なにを?」
    「アタシ、もう加持さんをあきらめるわ」
    「って、そんなあっさりに」
    「諦めるって言っても、加持さんは好きよ。でも、それはアイドルみたいな感じね」
    「そういうこと、か」
    「そう、そういうことよ。でね、アタシは手に入れるの。アタシだけを見てくれる人を。絶対にね」

     私は彼女を見つめながら、中学生でこんな決心をするなんて凄いと思ってしまった。
    「アスカさん、もうそんな人はいるの?」
    「ん?、いないわよ。まあ、加持さんに匹敵するような人じゃないと駄目だし、そんなヤツが
    おいそれといるわけないし、あせらずに探すわ」
    「……がんばってね」
    「もちろんよ」
     と言ってから、アスカさんは身に纏う雰囲気を変えて、
    「ところで、さっきファーストも来るようなこと言ってたわね」
    「うん、レイちゃんも来るよ」
    「あの、ファーストがマジで? 孤独が大好きみたいな女が?」
    「ううん、レイちゃんって、付き合いいいよ。誘うといつも付き合ってくれるもん」
    「うそ、信じられないわ」
     と、アスカさんは驚いたように目を見開いてから、そばを指差し、
    「じゃあ、これ、どうする? 3人分しかないわよ」
    「あ、それね。こうすればいいよ」
     私はキッチンに行って平皿を持ってくると、
    「こうして、ちょっとずつ分けてと」
     と、その3人前のざる蕎麦から持ってきた平皿にそばを分けて、4人分に増やした。
    「ん〜、でも、ちょっと少なくなっちゃたわね」
    「それも大丈夫。シンジ君に他に食べるものを頼んだから。だって、引越祝いなんだもん。
    美味しいものをいっぱい食べないとね」
    「マナって、食べることになると夢中になるのね」
    「あうっ」
     アスカさんはそんな私を見て、くすっと笑いながら、
    「シンジたち、遅いわね。こんなんじゃ、おそばがのびちゃうわよ」
     と言ったが、案の定、シンジ君とレイちゃんが来て、パーティーになった時にはもう
    のびたそばを私たちは食べることになったのだった。
     でも、みんなで食べるご飯は美味しいと、私は食後のプリンを食べながら思った。

    ×月31日
    〜中略〜
    本部E系統配線図を入手したので、明日、エージェント・スミスに渡します。