-plot239-
原子炉を搭載する巨大戦闘ロボット・ジェットアローンのお披露目会をするのなんの という話があったけど、突如、中止になったみたい。 秘密裏に開発していて、つい最近その存在が明らかになったんだけど、当然ながら 原子炉を積んだロボットが使徒と格闘戦をするなんて危険きわまりないということで、 IAEAから解体勧告が出たのどうのと、そんな感じ。 と、そんなことはどうでもいいのよね。今の私にとっては。 前は戦自でトライデントの訓練もしていたし、やる気満々だったけど、今はなんとなく 普通の学校生活の方が楽しくなってきている。 いろいろ思うところはあったけど、これはこれでいいよねって感じです。 ところで、ここに転校してきたマユミちゃんはとーっても読書が大好きみたい。 放課後はいつも学校の図書室で本を読んでいる。 本を借りて家で読めばいいのにと思ったんだけど、 『たくさんの本に囲まれた中で読むのが好きなんです。心が落ち着くような気がして』 とマユミちゃんは私に言ってくれた。 『それに本の匂いが好きなんです』 ともマユミちゃんは言う。 漫画や雑誌くらいしか読まない私にはただただすごいなーと思ってしまう。 そんなわけで図書室の前を通ると、ついマユミちゃんがいるかなと中の様子を窺ってし まっていたんだけど、昨日の放課後、 「あれっ、シンジ君」 と彼の姿を見て、少しだけびっくりしてしまった。 二人は6人掛けの机に向かい合って座り、それぞれ黙って本を読んでいた。 いつの間に二人は仲良くなったのかなと思ったりもしたんだけど、それほど気にせずにいた。 でも、今度は昨日よりもずっと 「ええっ!」 とビックリした。 今、図書室の中を見たら、マユミちゃんとシンジ君がいるのはいいとして、そこにレイちゃん までも加わっていたから。やっぱり、3人とも無言で本を読んでいて。 えーと、もしかして図書室での読書が流行っているのかな? 私は自分もそこに行かなきゃと思って、図書室へ入っていった。 すると、私に気づいたマユミちゃんは小さく微笑んで、ペコッと頭を下げた。
私も笑みを返して、適当に雑誌を取ってマユミちゃんの横に座る。 図書室の中で騒ぐことは厳禁なので、私は小声で彼女に、 「なにを読んでるの?」 「これです」 と言って、マユミちゃんは本の表紙を見せてくれた。 そこには太宰治の人間失格と書かれていて、……ちょっと私には難しいような。 ちなみにレイちゃんの読んでいる本を覗いてみたら、ユング全集第12巻とか、 これも私には無理。えーと、シンジ君はと、江戸川乱歩か。これなら私にも。 と、みんな本当に黙ってずっと本を読んでいて、結局、閉館時間までいてしまった。 そんな4人での帰り道、レイちゃんにどうして図書室で本を読むようになったのか訊い てみたら、 「読み終えても、すぐに別の本を読めるから便利」 と、ごもっともな答えが返ってきた。 そんな時、ふと、シンジ君とレイちゃんとマユミちゃん、一緒にいてもそれぞれみんな 思い思いに本を読みだけで、他の人に干渉しないんだなと思った。 そんな3人は似ているような気がして、まるで、 「マユミちゃんたちって、ネコみたいだね」 と、つい私の口から出ていた。 マユミちゃんは僅かに首を傾げて、 「ネコですか?」 「うん。なんとなくマユミちゃんもシンジ君もレイちゃんもネコみたいだなーって。3人とも かわいい感じがするよ」 その言葉にマユミちゃんは頬を少し染めて、同じように照れているシンジ君が、 「じゃあ、僕らがネコなら、マナは子犬かな?」 「うん。そうかも。もし人をネコか犬かに分けるなら、私はきっと犬だと思うよ。アスカも絶対 に犬よね。だって、キャンキャンうるさいもの」 と私が言うと、シンジ君が吹き出すように笑い、 「じゃあ、委員長もイヌの方かな」 「そうね。ヒカリちゃんも私と同じ犬族よ」 と言った私の横で、 「……私は猫、」 と呟くレイちゃんがちょっとかわいいかった。
そう言えば、やっと思い出したけど、鈴原君と相田君はどうだろう。二人ともネコにも イヌにも入らないような。強いて言えば、サル? そんなことを思ったら、プッと吹き出してしまった。 イヌ、ネコ、サル。これって、確かどれも相性がよくないわね。 そう私は思うと、 「私たちって、ネコとイヌに分かれているけど、なんかバランスが取れてて仲がいいよね」 と言った。 すると、マユミちゃんが私に何か訊ねるような目を向けて、私はニコッと笑みを送ってから、 彼女の手を握り、 「ねえ、これから私の家で夕ごはん食べよう。マユミちゃんもいいでしょ?」 と訊いた。 マユミちゃんは少し考え込んでから、 「お養父さん、今日は遅くなると言っていたから、……あの、いいんですか?」 「もっちろん、OKの3連呼よ。シンジ君とレイちゃんもいいよね?」 「うん、」 とシンジ君は言い、レイちゃんはコクンとうなずいた。 そして、私たちは夕ごはんを何にしようかと話ながら家路についたのだった。 △月19日 〜中略〜 エヴァ四号機の輸送日が決まったようです。