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家庭科の授業、ハンカチに刺繍をするのをやることになった。 実習室の中は6人掛けのテーブルに各班で座ることになり、私はヒカリちゃんと 同じ班だった。やっぱりヒカリちゃんはこういうことが上手で、今すぐ主婦となっても 問題無いんじゃないかな。でも、ヒカリちゃん自身は将来なりたいものがあって、結 婚しても仕事はしたいようなことを言っていた。 ところで、私の刺繍の方はというと、……何も言うまい。 そんなことよりも私は斜め前の方のグループがちょこっと気になっていた。 その班にはマユミちゃんとシンジ君が一緒で、二人はなんだか楽しそうに話しながら 実習をしてる。マユミちゃんなんて、いつもは見られないような表情で笑っているし。 ちょっといい雰囲気。 そう言えば、この頃ふたりがよく一緒にいるのを見かける。 う〜ん、もしかして、そういうことなのかな? と、そんなことを思っていて、休み時間にマユミちゃんと二人っきりになったから、 ちょっと聞いてみることにした。 「ねえ、マユミちゃん。シンジ君って、好きな人いるのかな?」 「きゅ、急にどうしたんですか?」 と、マユミちゃんは慌てふためいていた。 「んー、ちょっと気になっただけ。でも、マユミちゃんも知りたいと思わない?」 「私は……、」 「シンジ君、つきあっている女の子はいないみたいなんだよね。私、彼女に立候補し ちゃおうかな〜」 「マナさん、本気なんですか?」 「ダメ〜?」 マユミちゃんは僅かにうつむいて、口を閉ざしていたが、 「マナさんが本当にシンジ君を好きなら、……こ、告白した方がいいと思います」 「……冗談だよ」 と言って、私は舌をちょこっと出して笑った。 「ええっ!」 「びっくりした?」 「もう、驚きました。どうしてそんなことを言ったんです?」 と、マユミちゃんは少し怒っているような感じで言った。
「今の時代って使徒が来たり、戦争がどこかでいつも起こっていたり、何があっても おかしくないじゃない。そんな中、私たちは中学生をしているのにあんまりにも恋話が 少ないような気がするのよ。普通だったら、もう四六時中、恋の話をしているもんじゃない?」 「……そうかもしれませんね」 「でしょ? だから、恋愛強化月間なのよ。私的には」 「はぁ、」 「私的には微妙にシンジ君は恋愛対象にならないんだけど、マユミちゃん的にはどうなの?」 「わ、私ですか?」 「うん。なんか、最近、シンジ君と仲良さそうに見えるけど」 マユミちゃんは少し考えるようにまぶたを閉じてから、 「……恋とかそういうのはよくわからないけど、シンジ君とお話をするのは楽しいです」 「あ、やっぱり?」 「私、前の学校は女子校だったし、少し男の子が苦手だったんです。でも、シンジ君は今ま での人とは少し違うような感じで、あまり苦手な感じもしないし、……その、楽しいんです」 「そっか、そうなんだ」 私はニコッと笑ってから、マユミちゃんの手を握った。 これからちょっと何かが起こりそうな気配。 少しワクワクするような午後の空気だった。 △月30日 〜中略〜 四号機の操作にも慣れ、使徒との戦いにも出撃できそうです。