-外伝(2)-
今日はお祭り好きのアスカのお供で近所の神社へ。 何でも今年の節分祭には人気力士の琴独逸が豆まきに来るとかで、 アスカはいつになく張り切っている。 メンバーは、例によってアスカ、私、綾波さん、シンジ、ヒカリちゃんに鈴原君、相田君。 そして、保護者(というかお財布役)としてミサトさんとリツコさん。 参道には屋台が鈴なりになっている。アスカが、そのうちの一つを指差し、 「あれって、何? 何を売ってるの?」 と尋ねた。 「あれはクジ屋さんだよ」 シンジが説明する。 「ふーん。でも日本のクジ(>>489)ってガラガラポンってするんじゃないの?」 「ああ、あれは福引きって言うんだ。こっちは箱の中にクジが入ってて手を入れて引くんだよ」 「ふーん」 アスカは、さして興味を惹かれたわけでもない様子で、そのままクジ屋を通り過ぎようとした。 「アスカ、やってみなさいよ。当たるかもよん」 と、ミサトさん。 「そんな、そうそう当たるわけないでしょ。まったくミサトったら、子供っぽいんだから」 「そう言わずに、ね♪」
「そう? じゃ、一回だけやってみようかしら」 ミサトさんがやけに熱心に勧めるので、アスカもその気になったらしい。 「おじさん、一回引かせて♪」 「はいよ、二百円!」 「高〜い!」 「そう言いなや。ウチは当たりもヨソよりようけ入っとるけ」 「本当? それじゃ、はい。二百円」 アスカはお金を渡すと、袖をまくって箱の中からクジを引いた。 「どれ、貸してみ」 引いたクジをおじさんに渡す。 「おお! 大当たり! 一等賞〜〜!!」 なんと。アスカは見事、一等を当てた。この前の福引きといい、なんてクジ運のいい娘! 「やっぱりネ……」 振り返ると、ミサトさんがプレステを貰って大喜びのアスカを眺めながら ニヤリと笑ってそう呟いた。 へ、やっぱりって? 何が?
「はい、男子集合〜」 ミサトさんはパンパンと手を叩いて、男の子たちを集めた。 「いい? あなたたちは今日出ているクジ屋の所在を全て調べてアタシに報告すること」 「分かりましたけど……、ボクらがクジ引いてくればすむこっちゃないですか?」 と、鈴原君。 「引いちゃダメッ! いいから、言う通りにしなさい」 ――――約十分後、 男の子達が調べてきた情報に基づき、ミサトさんがテキパキと指示を出す。 「いい、ヒカリちゃんはここ、レイはここ、マナちゃんはここで引くのよ」 私たちは指示に従ってクジを引いていった。 まずヒカリちゃん。なんと、ヒカリちゃんはアスカに続いて一等を引き当てた! 賞品のNintendo128を鈴原君に持たせ、次へ向かう。 綾波さんが無表情でサッと引くと、またもや大当たり! 賞品は大相撲観戦ペアチケット……。 うぅ、次で私がハズしたら、なんだか恥ずかしいなぁ。 ってか、ハズれるのが当たり前で、こんなに当たりが続くのが異常なんだけど……。 ……… …… … 「大当たり〜〜!!」 なんと私も大当たり。 賞品の最新型ビデオカメラは相田君が欲しそうな顔をしていたのであげることにした。
私たちは意気揚々とミサトさんとリツコさんが待つ集合場所へと引き揚げた。 「やっぱり、全員当たったわね。よし、クジ屋はもう一軒あるわ。最後はアタシが……」 ミサトさんはそう言うと、私たちを引き連れて最後に残った店に向かった。 ……結果は、ポケットティッシュ一個獲得………。 がっくりと肩を落とすミサトさん。 うーむ。でも、クジなんて当たらない方が普通なのにどうしてそんなに落ち込むのかな? 「なんでミサト、あんなに凹んでるの? 4勝1敗なら悪くないのに」 アスカも訝しんでいる。 「4勝1敗だから凹んでるのよ」 リツコさんが口を開いた。 「いい? 普通に考えたら4人連続でクジが当たるなんてあり得ないでしょ? なぜそんな事が起きるかというと、クジ屋がイカサマをしてるからなの。 そもそも、あの箱の中には当たりは入ってないのよ。 でも、当たりがまったく無しじゃ客が納得しないから、 たまに可愛い女の子なんかが来たとき、クジをすり替えて当てさせるの」 「はぁ、女の子ですか……」 「そう。しょぼくれたオッサンに当てさせるより可愛い女の子に当てさせた方が人目を引くでしょ」 「なるほど……」 「で、ミサトは、それなのに当たらなかったから凹んでるのよ」 ……………ミサトさん、ドンマイ!